【はじめに】
「同期はもう一人で受け持っているのに、私はまだ先輩に確認してばかり」
「同期が褒められると、喜びたいのに胸が苦しくなる」
そんな自分を、「性格が悪い」「看護師に向いていない」とまで責めていませんか?
同期を応援したい気持ちと、自分だけ置いていかれる怖さは、同時にあっても不思議ではありません。
新人看護師が同期と比べてしまうのは、よくあることです。
新人の時期は、自分がどれくらい成長できているのかを判断する基準がまだ少なく、同じ時期に入職した同期が、いちばん近い「ものさし」に見えやすいからです。
私も新人時代、ルートキープに失敗した日に同期が成功している姿を見て、「なぜ自分だけできないんだろう」と落ち込みました…
同期が先輩から「最近、仕事を覚えてきたね」と声をかけられていると、その場では平静を装いながら、自分だけ置いていかれたように感じていました。
同期が褒められただけなのに、自分が否定されたように感じてしまうことがありました…

そこで、この記事では、なぜ同期を見るたびに「自分だけできない」という結論になってしまうのか、その心の動きを一緒に整理します!
比べる癖を無理に消すのではなく、比べてしまったあとに、自分を強く責めないための考え方をお話しします。
新人看護師が同期と比べてしまうのは普通です
同期が気になってしまうのは、あなたの心が狭いからではありません。
人は、自分を評価する客観的な基準がないとき、他者との比較から自分の位置を確かめようとします。心理学者Festingerが提唱した社会的比較理論でも、人が自分の能力や意見を確かめるために、周囲と比べる傾向が示されています。
新人看護師の仕事には、テストのような分かりやすい点数がありません。

比較すること自体は、性格の悪さではありません。まだ分からない自分の現在地を知ろうとする、ごく自然な反応です!
「安全にできたか」「報告のタイミングは適切だったか」「優先順位はどうだったか」など、複数の要素で評価されます。しかも、毎日患者さんも業務も変わります。
そのため、採血ができた、受け持ち人数が増えた、夜勤が始まったという同期の目に見える変化を、自分の成長を測る基準にしやすいのだと思います。

なぜ「自分だけできない」という結論になるのか
同期の「見える結果」と自分の「見えない迷い」を比べるから
勤務中に見えるのは、同期が落ち着いて申し送る場面や、処置を終えた場面です。
一方、自分については、報告前に何度も言葉を組み立てたこと、手順を間違えないか不安だったこと、帰宅後まで反省していることを全部知っています。
私たちは、自分の迷いや失敗は最初から最後まで知っています。
一方で、同期について見えているのは、うまくできた一場面だけかもしれません。

それでも比べるときは、他人の「見える結果」と自分の「見えない苦しさ」を並べてしまいます。
条件の違う比較なのに、「同期はできる、自分はできない」という結論だけが残ってしまうのです。
経験した回数ではなく、入職後の月数だけで比べるから
同じ4月入職でも、受け持った患者さん、経験した処置、指導者、夜勤開始の時期は違います。
ルートキープを2回経験した人と20回経験した人を、単に「同じ3か月目」という理由だけで比べることはできません。
入職した日は同じでも、そこまでに歩いた道は同じではないのです。
厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」も、新人看護職員の臨床実践能力は段階的に育てていくものとして、職場全体で支える体制を示しています。新人の成長は、本人の努力だけで決まるものではありません。経験できた機会や、安心して質問できる支援体制にも大きく左右されます。
一つの苦手を「看護師として全部だめ」に広げるから
申し送りで詰まった日、「今日は報告の組み立てに迷った」ではなく、「私は仕事ができない」と考えてしまうことはありませんか?
さらに、「同期より遅い」から「看護師に向いていない」まで結論を広げると、一つのつまずきが、自分全体への否定に変わってしまいます。

「今日は報告で詰まった」と「私は看護師に向いていない」は、同じ意味ではありません。
仕事に慣れていない感覚を整理したい方は、次の記事も参考にしてみてください。


比較が成長のヒントになるとき、心を削るとき
| 比較した後に起きること | 比較の状態 |
|---|---|
| 次に練習したい行動が一つ分かる | 成長のヒントになっている |
| 同期に方法を聞ける | 学びに変えられている |
| 焦るが、休日には気持ちが戻る | 一時的な反応の範囲 |
| 同期を見るだけで動悸や強い落ち込みが出る | 心を削る比較になっている |
| できたことがあっても「同期より遅い」で消してしまう | 自分への評価が偏っている |
| 質問や挑戦を避けるようになった | 成長を妨げる悪循環が起きている |
比較がすべて悪いわけではありません。
「同期は報告の最初に結論を言っていた。自分も次は真似してみよう」と、行動へ変えられるなら役立ちます。
一方、「同期はできている。だから私はだめだ」で終わる比較は、次にどうすればよいかを教えてくれません。
自信がなくなるほど質問や挑戦を避け、経験する機会が減り、さらに差が開いたように感じる。

そんな悪循環に入ると、努力しているのに苦しさばかりが増えてしまいます。
「できる・できない」以外の成長も見落とさない
新人の成長は、処置を一人で終えられたかだけでは測れません。
- たとえば以前は異常に気づいても声をかけるまで10分迷っていた人が、今日はすぐ先輩へ報告できた。
- 手順はまだ遅くても、実施前に不明点を確認できた。
- 患者さんへの説明で分からないことを曖昧にせず、確認してから答えた。
これらはすべて、安全に働く力が育っている変化です。
もし少し余裕がある日は、次の3方向から一つずつ探してみてください。全部見つけられなくても大丈夫です。一つあれば十分です。
- 知識・技術:前より準備や手順で迷わなくなったこと
- 判断・安全:気づけたこと、確認できたこと、早く相談できたこと
- 関係・回復:質問できたこと、助けを求められたこと、休日に少し回復できたこと
同期が先にできた技術だけを数え、自分が積み重ねた安全行動をゼロにすれば、比較の結果はいつも自分に不利になります。
評価の軸を増やすことは、自分を甘やかすことではありません。できていないことだけに隠れていた成長を、実際の姿に近い形で見直すことです。
同期と比べて苦しいときにできる5つのこと
1.比較をやめるのではなく、比較の単位を小さくする
もしまた「同期の方が仕事ができる」と苦しくなったら、その言葉を少しだけ小さくしてみます。
「報告の最初に要点を言える」「物品の場所を覚えている」と行動まで分けると、才能の差ではなく、これから練習できる一つが見えてきます。
2.月数ではなく経験回数を確かめる
苦手な処置について、「同期はできた」だけで終わらず、「自分は何回経験し、どこで止まるのか」を見てみます。
経験が少ないなら、能力がないのではなく、まだ繰り返す機会が少ないだけかもしれません。
同じ勤務日でも、受け持つ患者さんの状態、入退院の有無、処置を任された回数は違います。
同期が一度でできたように見えても、学生時代の経験や事前練習まで同じとは限りません。

「入職して何か月だから、同じ地点にいるはず」と考えるほど苦しくなります。
月数ではなく、自分が実際に経験できた回数と、次に確かめたい一つへ目を向けてみてください。
3.昨日の自分との差を一行だけ残す
「点滴更新の時間を勤務開始時に確認できた」「分からないまま進めず、一度質問できた」など、行動を一行だけ残します。
成長は、褒められた回数だけでは測れません。
患者さんの変化に気づいたこと、安全のために確認したこと、相談を先延ばしにしなかったことも、看護師として大切な成長です。
4.同期を成績表ではなく情報源に戻す
話せる関係なら、「申し送り前、どう整理してる?」と方法を一つだけ聞いてみます。
「最近どう?」と尋ねると、落ち着いて見えた同期も同じように悩んでいたと分かることがあります。
競争相手に見えていた同期が、同じ時期を生きる仲間へ戻る瞬間です。

5.自分の努力と職場環境を分ける
同期より遅れているように感じても、そのすべてが本人の努力不足とは限りません。
特定の新人だけ経験機会が少ない、指導者によって教え方が変わる、質問すると嫌な顔をされる、失敗後に方法を教えてもらえない。
こうした環境では、誰でも萎縮し、安心して練習しにくくなります。
残る・異動する・転職するを比較して考える
同期との差が気になるからといって、すぐに転職する必要はありません。
時間と経験が助けてくれることもあります。
ただ、比較の苦しさの背景に、経験機会の偏りや質問できない環境があるなら、努力だけで抱えず、働く場所を調整することも選択肢に入れてよいと思います。
| 選択肢 | 向いている状態 | 注意点 |
|---|---|---|
| 今の職場に残る | 相談できる人がおり、経験とともに苦手が減っている | 期限なく我慢を続けない |
| 院内異動を相談する | 病院の制度や待遇は合うが、部署の業務・人間関係が合わない | 異動時期や受け入れ体制を確認する |
| 別の職場へ転職する | 支援を求めても改善せず、心身の不調や萎縮が続く | 焦って次を決めず、教育体制を確認する |
転職サイトへの登録は、今すぐ辞めると決めることではありません。
ほかの職場の教育体制や勤務条件を知るだけでも、「今の職場だけが看護師のすべてではない」と気づけることがあります。
まず残る方法や異動の可能性を考え、それでも安心して学べない状態が続くなら、転職を含めて考えても大丈夫です。
続けるか迷っている方は、判断基準を整理した次の記事も参考にしてみてください。

比べる苦しさが心身に出ているときは相談を優先する
同期を見るだけで涙が出る、眠れない、食欲が変わった、休日も自分を責め続ける、出勤前に動悸や吐き気が出る。

このような変化が続くなら、もう「もっと努力して追いつけばいい」と一人で背負う段階ではないかもしれません。
まずは休むことと、誰かに状況を話すことを優先してほしいと思います。
厚生労働省「こころの耳」では、睡眠・食欲の変化や疲労が取れない状態などを、こころの不調に気づくポイントとして挙げています。教育担当者、上司、産業保健スタッフ、医療機関などへ相談し、一人で結論を出さないことが大切です。職場へ話しにくい場合は、「こころの耳」の相談窓口も利用できます。

よくある質問
同期が褒められると嫉妬してしまいます。性格が悪いですか?
性格が悪いわけではありません。自分も認められたい、置いていかれたくないという不安が刺激されているのだと思います。
まず「嫉妬した自分」まで責めず、何ができないと感じたのかを、一つの行動へ分けてみてください。
同期より仕事が遅いと、看護師に向いていないのでしょうか?
仕事の速さだけで、看護師への向き不向きは決まりません。
経験した処置や指導体制も違います。
安全のために確認できたこと、患者さんの変化を報告できたこと、分からないことを放置しなかったことも、あなたが積み重ねてきた力です。
同期と距離を置いてもよいですか?
比較で消耗している時期は、無理に何でも共有しなくても大丈夫です。
ただ、ひとりきりになると不安が強まることもあります。
同期以外でも構わないので、教育担当者や話しやすい先輩など、安心して状況を話せる人が一人いると少し違います。
まとめ|同期は、あなたの成績表ではありません
同期と比べてしまうのは、自分の現在地を知ろうとする自然な反応です。
ただし、同期の見える結果と自分の内側を比べ、「自分だけできない」と決める必要はありません。
もしまた同期と比べて苦しくなったら、「私は何もできない」と決めつける前に、どの場面でつまずいたのかを一つだけ見てみてください。
入職後の月数は同じでも、経験できた処置や受け持った患者さんは一人ひとり違います。
今の自分に足りないのは、能力ではなく、まだ経験する機会なのかもしれません。

同期はあなたの成績表ではありません!昨日の自分と比較して、
出来ていることが一つでも増えていればそれで十分です!
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考資料
- Festinger, L.(1954)A Theory of Social Comparison Processes
- 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン改訂版について」
- 厚生労働省「こころの耳|ご家族にできること」
- 厚生労働省「5分でできる職場のストレスセルフチェック」
おすすめ記事
仕事に慣れない焦りが、同期との比較につながっている方はこちらも参考にしてみてください。

「自分だけできない」という気持ちで、自信を失っている方へ。

勤務前日の夜まで比較や不安が続き、眠れないときに読んでほしい記事です。

朝になると仕事へ行くこと自体がつらい方は、限界の目安も確認してみてください。



コメント