【はじめに】
先輩からそう言われた瞬間、急に緊張した経験はありませんか?
患者さんのカルテを開いて、バイタルサインを確認して、伝える内容をメモする。
「○○病棟の○○です。○号室の○○さんについて報告です……」
電話をかける前に何度も頭の中で練習するんですよね。

それでも、実際に医師から「いつから?」「今の血圧は?」「あなたはどう考えてるの?」と予想していなかったことを聞かれると、一気に頭が真っ白になってしまう…
電話を切ったあと、「もっと確認してから報告すればよかった」と落ち込むこともあると思います。
でも、医師への報告が怖いのは、単にあなたが話すことを苦手としているからではありません。
患者さんの状態を把握し、何が問題なのか考え、必要な情報を選び、短時間で相手に伝える。
医師への報告には、いくつもの判断が同時に求められるから難しいのです。

この記事では、新人看護師が医師への報告や電話を怖いと感じる理由と、報告前に何を整理すればいいのか、質問に答えられないときの考え方まで分かりやすく解説します!

新人看護師が医師への報告を怖いと感じるのは珍しいことではありません
新人看護師の臨床判断について文献を整理した日本看護科学会誌のスコーピングレビューでは、新人看護師の経験として「臨床判断のための情報収集と報告」が抽出され、その中には**「医師への報告における自信と恐怖」**も含まれています。
また、厚生労働省の新人看護職員研修ガイドラインでも、新人看護師が身につけていく能力の一つとして「業務上の報告・連絡・相談を適切に行う」ことが示されています。

つまり、報告は新人になった瞬間から完璧にできて当然のものではなく、経験や指導を受けながら身につけていく能力の一つです!
医師への報告でうまく話せないからといって、「コミュニケーション能力がない」「看護師に向いていない」と考える必要はありません。
まだ、その判断の仕方を覚えている途中なのです。
もどかしく感じる方もいるかもしれませんが、「小さなことからコツコツと」です💦
なぜ新人看護師は医師への報告・電話が怖くなるのでしょうか?
①「何を報告すればいいのか」がまだ分からない
患者さんには、たくさんの情報があります。
バイタルサイン、意識状態、食事量、排泄、点滴、内服、検査結果、既往歴、今までの経過……。
新人の頃は、情報を集めることはできても、「この状況で医師が判断するために必要な情報は何か」まで選ぶことが難しい場合があります。
全部伝えようとすると報告が長くなる。でも情報を減らすと、「それは確認してないの?」と言われるような気がする。
この経験が続けば、「次は何を聞かれるんだろう」と不安になるのも無理はありません。

医師への報告が上手になるためには、情報をたくさん集めるだけではなく、少しずつ「今必要な情報」を選べるようになることが大切です。
②「何を聞かれるか分からない」から怖い
新人看護師が準備している報告は、どうしても一本の台本になりやすいものです。
ところが、実際の会話は台本通りには進みません。
と、報告した内容によって質問が次々と変わります。
そして一つ答えられなくなると、「こんなことも確認していないと思われたかもしれない」と焦り、その後に準備していた内容まで飛んでしまうことがあります。

怖いのは電話そのものというより、自分では予測できない質問が返ってくることなのかもしれません…
③「そもそも電話するほどのこと?」と迷う
もう一つ難しいのが、報告する内容だけではなく、**「今、医師に報告する必要があるのか」**という判断です。

こんなことで電話したら迷惑かな?そもそも報告するほどのこと?
と思って報告をためらう一方で、

報告しなかったら、どうして早く言わなかったのと言われるかもしれない…
という不安もあります。
経験を積んだ看護師なら、患者さんの状態やこれまでの経過から「これは今報告した方がいい」と判断できる場面でも、新人にはまだ同じだけの経験がありません。
だから、報告の必要性そのものに迷うことがあります。それは、当たり前のことです。
④ 医師の反応を想像すると怖くなる
報告したときに、
「で?」
「何が言いたいの?」
「それで何をしてほしいの?」
と強い口調で返された経験があると、次の電話をかけるだけでも緊張するようになります。

実際、新人看護師の臨床判断に関するレビューでも、医師への報告について「自信と恐怖」が扱われ、医師の反応を意識しながら患者のために伝えようとする経験が報告されています。
ただ、ここで忘れたくないことがあります。
医師への報告の目的は、「医師に後で怒られないため」ではありません。「患者さんの治療に必要な情報を届けるため」です。
この軸だけは、失わなくていいと思います。
医師への報告が怖くなると、自分で報告することを避けたくなります
一度うまく報告できなかった経験があると、次からは電話をかける前に必要以上に情報を集めたり、
何度も先輩に「これで大丈夫ですか?」と確認したりすることがあります。
さらに怖さが強くなると、
と、報告そのものを避けたくなることもあるでしょう。
すると、自分で報告する経験が減り、ますます自信がなくなる。
怖いから避ける→経験できない→さらに怖くなる。
そんな悪循環になることもあります。
だから最初から完璧を目指すのではなく、「今回はここまでできた」「次はここを確認してから電話しよう」と、一回の報告を次につなげる方が大切です。

医師への報告は「完璧」を目指さなくていい
① まず「なぜ報告するのか」を一言にしてみる
電話をかける前に、
「私は何が気になって、先生に電話するのか?」
を一度考えてみてください。
例えば、「熱があります」だけではなく、「38.5℃の発熱があり、昨日までと状態が違うため報告したい」と考えます。

報告の目的が自分の中で明確になると、その目的に必要な情報も選びやすくなります!
② 情報を相手が理解しやすい順番に整理する
報告を整理する方法の一つとしてSBARがあります。
SBARは、**Situation(状況)、Background(背景)、Assessment(評価)、Recommendation/Request(提案・依頼)**の順に情報を整理するコミュニケーション方法です。米国AHRQも、医療チーム間で情報を共有するためのフレームワークとして紹介しています。
ただし、大切なのはアルファベットを完璧に暗記することではありません。

①「今何が起きているのか」②「これまでどうだったのか」③「自分は何が気になっているのか」を整理してから伝えるだけでも、報告はかなり組み立てやすくなります。
病院独自の報告方法がある場合は、そちらを優先してください。
③ 聞かれて分からなければ「確認します」でいい
新人看護師ほど、
「電話する以上、何を聞かれても答えられなければいけないのかな…?」と思ってしまいます。
でも、分からないことを曖昧な記憶や推測で答える必要はありません。
「そこは確認できていません。確認して再度お伝えします」と伝えればいいのです。
そして電話を切ったあとに、「先生はこの状態のとき、この情報を確認するんだ」と覚えておく。

今日答えられなかった質問が、次の報告で確認できる項目に変われば、それも立派な経験です。
報告前に先輩へ確認してもらっても構いません
新人のうちは、医師へ電話する前に先輩へ相談することもあると思います。
それは、「自分で考えていない」ということではありません。
ただ、「何を言えばいいですか?」だけで終わるのではなく、
「私は○○が気になっていて、△△を報告しようと思っています。他に確認しておいた方がいいことはありますか?」
と、自分なりの考えを一度作ってから相談してみてください。
最初は「先輩に報告内容を作ってもらう」状態でも、少しずつ「自分で考えた報告を先輩に確認してもらう」状態へ変わっていきます。

厚生労働省も、新人看護職員の教育について、施設内に教育担当者などを置き、組織として新人を支える教育体制を整備することを示しています。
新人のうちに確認しながら仕事を覚えることは、決して恥ずかしいことではありません。
医師への報告は、経験するたびに少しずつ変わっていきます
それでも経験を重ねていくと、
「この状態なら、この数値を聞かれそうだな」
「この薬を使っているから、ここも確認しておこう」
「昨日とここが違うから報告しよう」
と、少しずつ先を考えられるようになります。
報告が上手になるというのは、話し方が上手になることだけではありません。
「相手が患者さんの状態を判断するために、どんな情報が必要なのか」が分かるようになることでもあります。

その感覚は、教科書を一度読んだだけで身につくものではありません。実際の報告を経験し、「何を聞かれたのか」「何が足りなかったのか」を一つずつ覚えていく中で育っていきます!
それでも医師への報告が怖くて動けないときは
報告するたびに威圧される、必要な報告をしても怒鳴られる、分からないことを確認することすら怖い。
そんな状態が続いているのであれば、すべてを「早く慣れて出来るようにならないと…!」と自分だけの問題にする必要はありません。

そういう場合は、プリセプターや教育担当者、上司などに、「医師への報告になると緊張してしまい、必要なことを伝えられなくなります」と相談してみてもいいと思います!
新人教育は、新人一人の努力だけで成り立つものではありません。厚生労働省も、新人看護職員を支える教育研修体制を施設として整える必要性を示しています。
「報告が苦手だからもっと頑張る」だけではなく、安心して練習できる環境を作ってもらうことも大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 医師に電話する前に何を準備しておけばいいですか?
まず患者さんの現在の状態、バイタルサイン、これまでの経過、関連する検査結果や薬剤など、今回の報告に必要な情報を整理しておきましょう。
そのうえで「何が気になって報告するのか」を一言で説明できるようにすると伝えやすくなります。

必要項目は病棟や状況でも異なるため、院内ルールも確認してみてくださいね。
Q2. 医師から聞かれたことに答えられなかったらどうすればいいですか?
分からないことを推測して答える必要はありません。
「そこは確認できていませんので、確認して再度お伝えします」と伝えれば大丈夫です。
そして、電話後に「この状態ではこの情報も必要なんだ」と振り返ってみてください。

答えられなかった経験も、次の報告で確認できる項目を増やすための材料になります!
Q3.「こんなことで電話するな」と思われそうで怖いです。
新人のうちは、「今報告するべきなのか」を一人で判断すること自体が難しいものです。
迷ったときは先輩に患者さんの状態と自分が気になっていることを伝え、報告が必要か相談してみてください。

基準にするべきなのは「医師に嫌がられないか」ではなく、患者さんに必要な対応が遅れないかどうかです。
Q4. 医師への報告はいつ頃から怖くなくなりますか?
一律に「○か月で慣れる」とは言えません。病棟や経験する患者さん、医師との関係、教育環境によっても違います。
ただ、報告のたびに「何を聞かれたか」「次回は何を確認するか」を振り返ると、少しずつ質問を予測できるようになります。

怖さが突然なくなるというより、対応できる場面が増えていくイメージです。
まとめ|「何を聞かれても答えられるようになってから」電話する必要はありません
医師への報告が怖いのは、あなたが看護師に向いていないからでも、コミュニケーション能力が低いからでもありません。
新人の頃は、患者さんの変化に気づき、必要な情報を集め、何が問題なのか考え、その中から必要な情報を選んで相手へ伝える、という一連の流れそのものを学んでいる途中です。
だから、最初から何を聞かれても答えられる必要はありません。
分からなければ確認すればいいし、迷ったときは先輩に相談してもいいのです。
大切なのは、一回の電話を「うまくできた・できなかった」だけで終わらせないことです。

今日答えられなかった一つが、次の報告では確認できる一つに変わっていく。
その経験を繰り返すうちに、医師への電話は少しずつ「怖いもの」から「患者さんの状態を伝えるための手段」へと変わっていきます!



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