はじめに

「昨日、A先輩から教えてもらった通りにやったのに、今日はB先輩から『それ違うよ』と言われた」…実際に私が経験したことです。
新人看護師として働いていると、こんな経験をすることがあります。
一度注意されたことは忘れないようにメモをして、次はできるように覚える。
それなのに別の先輩から、そのやり方を否定される。
そんなことが続くと、「結局、何が正しいの?」「昨日教わったことは間違いだったの?」と、自分で動くことまで怖くなってしまいますよね。

実際、看護師向け媒体である看護roo!でも「先輩によって言うことが違う」は、看護師が経験する悩みとして取り上げられています。
この記事では、なぜ先輩によって言うことが違うのか、何を基準に考えればよいのか、そして違う指導を受けたときにどう対応すればよいのかをお伝えします。

先輩によって言うことが違って混乱するのは、あなたの理解力が低いからではありません
最初に、一番伝えたいことがあります。

先輩によって言うことが違って混乱するのは、あなたの理解力が低いからではありません!
新人の頃は、まだ自分の中に「この場合はこう考える」という判断の軸が十分にありません。
そのため、先輩から教わったことを一つずつ「正解」として覚えようとします。
昨日、「この場面ではA」と教わった。だから今日はAをやってみる。
ところが別の先輩から「ここはBでしょ」と言われる。
新人からすれば、**「昨日の正解が、今日は不正解になった」**ように感じます。
特に真面目な人ほど、「一度教えてもらったことは次からできなければ」と考えるため、指導内容が変わるたびに「私が間違えてるの?」と混乱してしまいます。
でも、本当にあなたが間違えたのでしょうか?
患者さんの状態による違い、先輩個人のやり方、病棟内の指導の不統一など、理由はいくつか考えられます。

まず「自分が間違っていたのかも」と結論づける前に、何が違っていたのかを分けて考えてみましょう!
なぜ先輩によって言うことが違うのでしょうか?
① 患者さんの状態や状況によって対応が変わるから
看護では、同じように見える場面でも患者さんの状態が違えば、優先することや対応が変わることがあります。
経験のある先輩は「今日はこの状態だから、この方法にしよう」と判断していても、新人にはその判断過程までは見えません。
見えるのは、「昨日はAだったのに、今日はBと言われた」という結果だけです。

だからこそ、方法が違ったときは「どちらが正しいんだろう」と考えるだけではなく、**「今回は何が違うから、この方法なんだろう」**と考えることが大切です。
そもそも統一してほしい、と思うのは当然のことですが…💦
② 先輩それぞれに自分のやり方があるから
同じ目的にたどり着くとしても、仕事の進め方には人によって違いがあります。
準備や情報収集の順番など、経験を重ねるとそれぞれに自分なりの方法ができます。
そのため、「A先輩はこうする」「B先輩はこうする」の両方が間違いとは限りません。

安全性や目的が同じなら、「こういう方法もあるんだ」と一つの引き出しとして覚えておけば十分なこともあります!
新人の頃は「正解を一つに決めたい」と思いがちですが、看護の現場では、同じ目的に向かう方法が一つとは限りません。
③ 病棟内で指導内容が共有されていないこともあるから
一方で、すべてを「先輩によって違うから仕方ない」で済ませてよいわけではありません。
医療安全に関わることや、病棟で統一すべき手順まで人によって大きく異なるのであれば、新人が混乱するのは当然です。
厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」では、実地指導者・教育担当者・研修責任者などの役割を明確にし、施設の教育方針に基づいて新人研修を行う体制が示されています。また、一人の指導者だけではなく、複数の指導者が新人を担当する方法も想定されています。
つまり、複数の先輩が新人を教えること自体が問題なのではありません。

必要な部分について共通の基準があり、新人が迷ったときに確認できる仕組みがあることが大切なのだと思います。
「先輩によって違う」が続くと、自分で動けなくなることがあります
つらいのは、教え方が違うこと以上に、「何をしてもまた否定されるかもしれない」と思うようになることです。
昨日教わった通りにやって注意され、次は先に確認したら「それくらい自分で考えて」と言われる。
そんな経験が重なると、「今日の先輩はどうするんだろう」と、一つひとつの行動の前に立ち止まるようになります。
これは考えていないのではありません。
むしろ、間違えないように考えすぎた結果、動けなくなっていることがあります。
判断力がないのではなく、判断するための基準が毎回揺れているのです。

「もっと自分で考えて」と言われても、昨日と今日で正解が変わる環境では、「自分で考えた結果も否定されるのではないか」と不安になるのは自然なことではないでしょうか…?
そもそもそれは教育なのか?という疑問にもなりますよね💦
では、何を信じればいいのでしょうか?

私は、「誰の言うことを信じるか」ではなく、**「何を基準に判断するか」**に考え方を変えることをおすすめします。
① まず病院・病棟のルールを確認する
院内マニュアルや病棟で統一されている手順があるものは、まずそこを基準にします。
特に安全に関わる内容については、「A先輩がそう言ったから」という個人の記憶だけではなく、共通のルールがないか確認してみてください。
分からなければ、
「病棟ではどの方法で統一されていますか?」
と聞いて構いません。

先輩に聞きにくければ主任や課長など、上司に聞いてみましょう!
誰が正しいのかを決めるのではなく、まず**「病棟としての基準は何なのか」**を確認するという考え方です。
② 「どちらが正しいですか?」ではなく「なぜ違うのですか?」と聞く
違う方法を教わったときに、「A先輩にはこう言われました」と伝えるのは少し勇気がいりますよね。
そんなときは、
「前回はこの方法で教わったのですが、今回は違う方法だったので、どういう場合に使い分けるのか教えていただけますか?」
と聞いてみてください。
これなら先輩同士を比べるのではなく、自分が判断の理由を理解したいという聞き方になります。

看護師向け媒体(看護roo!など)でも、先輩によって方法が違う場合、根拠を確認したり、困ったときは信頼できる先輩や上司へ相談したりする考え方が紹介されています。
「何をするか」だけでなく「なぜそうするのか」が分かれば、次に似た場面に遭遇したとき、自分で考えるための材料になります。
③ 個人のやり方なら「一つの方法」として覚えておく
安全性や目的に違いがなく、単に細かな進め方が違うだけなら、すべてを「正解・不正解」に分ける必要はありません。
「A先輩はこうするんだな」「こういう方法もあるんだな」と、自分の引き出しに入れておけば十分です。
経験を積むうちに、「この方法の方が自分にはやりやすい」「この患者さんにはこちらの方が合っている」と、自分で選べる場面が少しずつ増えていきます。

新人のうちから、すべての先輩のやり方を完璧に覚える必要はありません!
私も新人の頃、「結局、誰に合わせればいいの?」と思っていました
私自身、新人の頃は日によってフォローしてくれる先輩が変わる環境で働いていました。
教え方や重視する部分が違うたびに、「前に教わったことを間違って覚えていたのかな?」と思ったことがあります。
でも今振り返ると、必要だったのは、すべての先輩に完璧に合わせることではありませんでした。
「病棟のルールなのか」「患者さんの状態によって変わるのか」「先輩個人のやり方なのか」
この3つを整理できれば、必要以上に自分を責めずに済んだと思います。

新人に判断の軸がないのは当然です!その軸を少しずつ作っていくことも、新人時代の学びなのだと思います。
何度確認しても指導がバラバラなら、あなた一人の問題ではありません
自分から理由を聞いても、マニュアルを確認しても、それでも先輩によって安全に関わる手順まで大きく違う。
誰に相談しても答えが統一されず、その日の担当者に合わせることだけを求められる。
そんな状態が続いているなら、「自分の理解力が足りない」と全部を背負う必要はありません。
厚生労働省のガイドラインでは、教育担当者は実地指導者への助言・指導や新人への指導・評価を担い、研修責任者は各部署との連携や調整を含めて新人研修全体を把握する役割とされています。
迷ったときに教育担当者やプリセプター、上司などへ、
「病棟としては、どのように統一されていますか?」
と確認することは、告げ口ではありません。
新人一人で先輩同士の違いを調整するのではなく、判断できる立場の人に整理してもらっていいのです。

「先輩によって言うことが違う」という問題まで、すべて新人本人の努力で解決しようとしなくてもいいのではないでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q1. 先輩によって言うことが違うとき、結局どちらに従えばいいですか?
まずは院内マニュアルや職場で統一されている手順がないか確認してみてください。
そのうえで、患者さんの状態による違いなのか、先輩個人の方法なのか分からない場合は、プリセプターや教育担当者へ確認しましょう。

「誰が正しいか」より「何を基準に判断するか」を整理することが大切です!
Q2. 「別の先輩にはこう言われました」と伝えるのは失礼ですか?
伝えること自体が失礼なわけではありません!
「A先輩はこう言いました」と比較するより、「前回とは方法が違ったので、どのように使い分けるのかを今のうちに知っておきたいです。」と聞く方が伝わりやすいでしょう。

質問した意図を説明し、次回に生かしたいという姿勢で確認すれば十分です。
Q3. 先輩ごとにやり方を変えて合わせた方がいいのでしょうか?
安全性や患者さんへの影響がなく、単に仕事の順番など個人のやり方の違いであれば、その場では合わせることもあります。
ただし、「この先輩の日はこの方法」とすべて暗記する必要はありません。

なぜ違うのかを理解し、複数の方法を自分の引き出しとして持っておくことが大切です。
Q4. 違うことを言われ続けて、自分で判断するのが怖くなりました。どうすればいいですか?
迷いやすい場面を具体的に書き出し、「病棟のルール」「患者さんによって変わる部分」「先輩個人のやり方」に分けて整理してみてください。

一人で判断できない部分は、上司や教育担当者へ確認して解決しましょう!
判断基準が見えるだけでも、必要以上に自分を疑わずに済むようになります。
まとめ
先輩によって言うことが違うと、「結局、誰を信じればいいの?」と混乱してしまいます。
特に新人の頃は、自分の中に判断するための基準がまだ十分にないため、昨日教わったことを今日否定されれば、「何が正解なのか分からない…!」と感じてしまうのも自然なことです。
でも、すべての先輩の言葉を一つ残らず「正解」として覚える必要はありません。
まず病棟のルールや安全上の基準を確認し、そのうえで「なぜ今回はこの方法なのか」を一つずつ理解していけばいいのです。
患者さんの状態によって変わることもあれば、先輩個人のやり方が違うだけのこともあります。
そして、指導そのものが統一されていないのであれば、それを新人一人で背負う必要もありません。

新人時代に必要なのは、誰かの正解を完璧に覚えることではなく、いろいろな考え方に触れながら、自分の中に「判断するための軸」を少しずつ作っていくことです。
今感じている「なぜ違うんだろう?」という疑問も、いつか自分で考えて動くための大切な経験になっていきます!



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