はじめに
ナースコールが鳴った瞬間、肩が跳ねる。まだ患者さんの要件も分からないのに、「急変だったらどうしよう」「私が取ったら、最後まで一人で対応しなければいけないのかな」と身構えてしまう。
誰もすぐに動かないナースステーションでは、「私が行かなければ」と焦る一方で、受話器を取る手が止まることもあります。鳴っていない時間まで次の音を待つようになると、勤務中ずっと気が休まりませんよね。

私も新人時代、コール音が鳴るたびに体がこわばり、周囲の反応をうかがっていました。

鳴ったあとに何が起こるか分からないことが怖かったのだと思います。
ナースコールの音で緊張するのは、あなたの性格が弱いからとは限りません。音と、その後に必要な判断・責任・周囲の視線が結びついている可能性があります。
この記事では、緊張が強くなる理由を整理したうえで、コールが鳴った直後の対応、勤務前に確認したいルール、先輩への相談方法を具体的にお伝えします。
新人看護師がナースコールの音だけで緊張する4つの理由
1.音の先にある要件を予測できないから
コールの内容は、水分補給や室温調整の希望かもしれません。一方で、息苦しさ、転倒、急な痛みなど、すぐに確認が必要な場合もあります。
経験が少ない時期は、音を聞いた瞬間に緊急度を見分けられません。そのため、要件を聞く前から最も悪い場面を想像し、体が緊張しやすくなります。
2.受け持ち以外のコールにも責任を感じるから
自分の受け持ち患者さんでなくても、誰も取らなければ気になります。しかし、担当外のコールを受けたあと、どこまで自分で対応し、誰へ引き継ぐのかが曖昧だと、取ることも待つことも怖くなります。
3.対応に遅れて注意された経験が残っているから
過去に「コールが鳴っているのに、なぜ行かないの」と強く注意された経験があると、次からは音そのものが叱責の合図のように感じられることがあります。
患者さんの安全を守るための振り返りは必要です。ただし、処置中や別の患者さんへの対応中など、一人では同時に動けない状況もあります。個人の反省だけで終わらせず、誰が代わるのかをチームで決める必要があります。
4.静かな時間も次の音を待ってしまうから
困った対応が続くと、コールが鳴っていない時間もPHSへ意識が向きます。休憩中も耳を澄ませ、帰宅後に似た電子音を聞いて病棟を思い出すこともあります。
音への反応だけで病気とは判断できません。ただ、睡眠や食欲、出勤にまで影響が出ているなら、「慣れるまで我慢する」より、負担を減らす相談を優先したい状態です。
ナースコールは「解決の合図」ではなく「確認の合図」です
新人看護師ほど、コールを取ったら自分が要件を解決しなければならないと考えやすいものです。しかし、最初の役割は、何が起きているかを確かめ、必要な人へつなぐことです。
厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」でも、新人看護師が多重課題の中で看護を安全に提供できるよう、部署全体で支える体制や、不安を和らげるための職場適応・メンタル面の支援が必要とされています。

コールを取った人が、すべてを一人で背負う必要はありません。要件を確認して応援につなぐことも、医療安全につながる行動です。
「音が鳴ったら、すぐ全部を解決する」ではなく、「まず要件を聞き、緊急度を見て、必要なら助けを呼ぶ」と分けて考えてみてください。

ナースコールが鳴った直後の5つの手順
1.まず名乗り、要件を最後まで聞く
「お待たせしました。どうされましたか。」と声をかけます。音を止めることだけに意識を向けず、患者さんの言葉を途中で決めつけないことが大切です。
2.安全に関わる症状を短く確認する
痛み、息苦しさ、転倒、出血、意識や会話の変化が疑われる場合は、電話だけで原因を決めようとせず、勤務先の手順に従ってすぐに応援を呼びます。
3.要件を復唱する
「トイレへ行きたいのですね」「胸が苦しくなったのですね」と短く確認します。聞き間違いを防ぎ、自分の頭の中も整理しやすくなります。
4.いつ、誰が伺うかを伝える
すぐに向かえるなら「今から伺います」、別の対応中なら「担当者へ伝えます」「〇分ほどで伺います」と、守れる範囲で伝えます。移動希望の患者さんには「一人で立たず、そのままお待ちください」など、安全のためにしてほしい行動も添えます。
5.一人で判断できないときは具体的に頼む
「〇号室の患者さんから息苦しさの訴えがあります。私は今、別の患者さんの処置中です。一緒に確認をお願いします」のように、部屋・要件・自分の状況・依頼したいことを短く伝えます。

「どうしよう」だけでなく、「誰に・何を手伝ってほしいか」まで言葉にすると、先輩も動きやすくなります!
ナースコールと点滴、記録、患者対応が重なったときは、新人看護師が『優先順位が分からない』と感じる理由も参考にしてください。
内容別に「最初の一言」を準備しておく
| コールの内容 | 最初に確認すること | 返答の例 |
|---|---|---|
| 排泄・移動 | 転倒リスク、安静度、現在地 | 「一人で立たず、そのままお待ちください。今伺います」 |
| 痛み・息苦しさ | いつから、程度、会話や意識の変化 | 「すぐ伺います。応援も呼びます」 |
| 物品・室温 | 要望の内容、対応できる時間 | 「分かりました。今の処置後、〇分ほどで伺います」 |
| 頻回に続くコール | 痛み、不安、排泄、説明不足などの背景 | 一人で抱えず、チームで対応方針をそろえる |
すべてのコールへ同じ速さで走ることが、必ずしも安全な対応とは限りません。緊急性を見分け、待ってもらう場合は理由と目安を伝えます。判断に迷ったときは、病棟の基準を優先してください。

次の勤務前に確認したい3つのルール
勤務が始まってから迷わないために、次の3点だけでも確認しておきましょう。
- 受け持ち以外のコールを取ったあと誰に繋ぐか
- 新人が一人で向かわず、すぐ応援を呼ぶ症状や状況
- 処置中など、すぐに行けないときの代行方法
ルールが分からない場合は、「担当外のコールを取ったあと、どこまで私が対応して、誰へつなげばよいか確認したいです」と聞けば、困っている場面が伝わります。
頻回コールのある患者さんについても、一人の看護師が毎回抱え込むのではなく、背景と対応方法を申し送りやカンファレンスで共有することが大切です。
私も、音より「誰も動かない空気」が怖かったです
新人時代の私は、コールが鳴っても誰もすぐに動かないナースステーションで、「誰が取るのだろう」と周囲の様子を見ていました。
自分が取れば、判断できない内容でも一人で抱えることになる気がする。でも取らなければ、消極的だと思われるかもしれない。その間にも音は鳴り続け、肩に力が入りました。
環境が変わり、担当外のコールを取ったあとに相談できる職場で働いて、私は初めて「音にここまで怯えなくてよかったのかもしれない」と感じました。
足りなかったのは気合いではなく、取ったあとの道筋だったのだと思います。

音への緊張は、本人の性格だけでなく、誰も動かない雰囲気や相談しにくさでも強くなります。
休憩中と帰宅後に警戒を下げる方法
休憩へ入る前に、「〇〇さんからコールがあれば対応をお願いします」と引き継ぐ相手を確認します。休憩中まで自分が反応し続けなくてよい状態を、言葉で作っておきましょう。
コール対応が終わったら、息をゆっくり吐き、肩と手を一度ゆるめます。「要件を確認した」「担当者へつないだ」と、終わった行動を一つ確認してから次の業務へ戻ります。
帰宅時は、PHSを返却する、制服を脱ぐ、業務メモを閉じるなど、「勤務は終わった」と区切る行動を決めます。私用スマートフォンの通知音が似ているなら、支障のない範囲で別の音へ変える方法もあります。

相談・休養・職場の見直しを考える目安
| 今の状態 | 次に考えたいこと |
|---|---|
| コールの要件や引き継ぎ方が分かると緊張が下がる | 病棟のルール確認、同行、短い振り返りを続ける |
| 音が鳴ると頭が真っ白になり、報告や訪室を避け始めた | 教育担当者や上司へ、困る場面と必要な支援を相談する |
| 不眠、食欲低下、動悸、涙、出勤困難などが続く | 休養を優先し、産業保健スタッフや医療機関へ相談する |
| 相談しても役割が曖昧なまま、過度な責任を負わされる | 院内異動や転職を含め、環境を変える選択肢を比較する |
厚生労働省の「こころの耳」では、不安感や緊張感、食欲の変化、不眠、動悸などをストレスサインとして挙げ、続く場合は早めの相談を案内しています。
今の職場で役割を整理すれば改善しそうなら、まずは相談や同行を試してもよいでしょう。病棟の忙しさやコール頻度との相性が大きければ、院内異動も選択肢です。支援を求めても状況が変わらず、心身の負担が続くなら、転職を比較してもかまいません。
転職サイトへの登録は、転職を決定する手続きではありません。別の職場の教育体制や夜勤人数、コール対応の分担を知るための情報収集として使うこともできます。

今日決めるのは「辞めるか、続けるか」ではありません。まず、音のあとに何が怖いのかを一つ言葉にするだけでも十分です。
相談すること自体が怖い方は、新人看護師が相談できない理由も読んでみてください。
※以下は広告を含みます。登録は転職を決める手続きではなく、教育体制を比較する情報収集としても利用できます。
よくある質問
受け持ち以外のナースコールも全部取るべきですか?
病棟のルールと、その時の業務状況によります。自分だけで抱え込まず、取ったあとの担当者へのつなぎ方、処置中の代行、緊急時の応援要請を先に確認してください。
コールへすぐ行けなかったら、どうすればよいですか?
まず患者さんの状態と要件を確認し、待たせたことを伝えます。その後、「なぜ行けなかったか」「誰が代行できたか」「次はどう共有するか」をチームで振り返ります。安全上の報告が必要な出来事は、勤務先の手順に従ってください。
帰宅後もナースコールの音が聞こえる気がします
似た電子音に反応し、病棟を思い出すことはあります。ただし、ここで原因や診断は判断できません。実際には音がないのに繰り返し聞こえる、眠れない、生活に支障がある状態が続く場合は、医療機関へ相談してください。
ナースコールが怖いだけで異動や転職を考えてもよいですか?
音そのものだけでなく、コールの多さ、急性度、役割の曖昧さ、相談しにくい雰囲気が負担になっていないかを分けて考えます。相談や同行で改善するなら現在の職場に残る方法もあります。支援を求めても変わらず、心身への影響が続くなら、異動や転職を考えてよい状態です。
まとめ|次の勤務では「取ったあと」を一つ確認しよう
ナースコールの音だけで緊張するのは、音のあとに必要な判断や責任、周囲の視線まで一度に背負っているからかもしれません。
次の勤務では、すべてを克服しようとせず、「担当外のコールを取ったら誰へつなぐか」「どの症状ならすぐ応援を呼ぶか」のどちらか一つを確認してみてください。
役割が見えると、音が鳴った瞬間にすべてを一人で背負わずに済みます。心身の変化が続くときは、慣れることより休養と相談を優先してください。

この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この記事を読んだ方におすすめの記事
ナースコールと複数の業務が重なり、何から手をつけるか迷う方へ。

先輩へ助けを求めたいのに、声をかけること自体が怖い方へ。

休みの日も病棟の緊張が抜けず、頭が休まらない方へ。

音への緊張だけでなく、睡眠や食欲、出勤にも影響が出ている方へ。

参考資料
- 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン改訂版について」(2014年)
- 厚生労働省「こころの耳|ストレスへの気づき」
- 厚生労働省「こころの耳|相談窓口」
運営者情報
えりもん|看護師
急性期病棟・手術室・回復期病棟・療養病棟を経験し、看護師として3回の転職を経験。新人時代に仕事や人間関係で追い詰められた経験をもとに、今つらい新人・若手看護師が壊れてしまう前に選択肢を持てるよう、実体験と公的資料を分けて発信しています。


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