先輩が準備した薬剤と患者さんの名前が違うように見えた。指示と実施予定の内容が一致していない気がする。
そんな場面で、「私の見間違いかもしれない」「新人から指摘したら失礼かな」と迷い、声が出なくなることがあります。
先輩との関係を悪くしたくない気持ちは自然です。自分の理解が間違っていたときに、恥ずかしい思いをするのも怖いですよね。
しかし、患者さんへの影響が考えられる場面では、立場より安全を優先する必要があります。
大切なのは、「先輩が間違っています」と人を評価することではなく、自分が見た事実を示し、「このまま進めてよいか」を確認することです。

この記事では、緊急度の見分け方、最初の一言、返答が曖昧な場合の伝え直し、上司へ相談する手順を説明します!
この記事で分かること
・先輩のミスらしき場面で新人が声をかけにくい理由
・「指摘」ではなく安全確認として伝える方法
・一度伝えても解決しない場合の対応
・関係が悪くなるのが怖いときの考え方
目次を開く・閉じる
結論|「間違いです」ではなく、見えた事実と確認したいことを伝えます
自分の判断に確信がなくても、安全上の違和感を確認して構いません。
最初の一言は、次の3点で組み立てます。
- 声をかける:「今、確認してもよいですか」
- 事実を伝える:「指示画面では○○と表示されています」
- 行動を確認する:「この内容で進めてよいでしょうか」
例えば、患者識別情報が一致しないように見えた場合は、次のように伝えます。
「○○さん、実施前に確認させてください。こちらの表示はAさんになっていますが、今準備しているのはBさん分で合っていますか」
ここでは、先輩の能力や注意力を評価していません。自分が見た情報と、確認したい行動だけを共有しています。

自分が間違っている可能性があっても、確認することはできます。「正しさを証明してから話す」のではなく、「安全のため一緒に確かめる」と考えてください。

新人看護師が先輩のミスを確認しにくい4つの理由
1.自分の知識に確信がないから
新人期は、院内ルールや例外的な対応をすべて把握しているわけではありません。「何か理由があるのかもしれない」と考え、声をかける前に止まってしまいます。
だからこそ、断定ではなく確認の形で伝えます。正解を知っている人だけが質問できるわけではありません。
2.先輩の機嫌や評価が気になるから
普段から先輩へ話しかけるだけで緊張していると、「生意気だと思われる」「今後教えてもらえなくなる」と考えます。
日本看護協会は、多職種が患者さんのために最善を尽くすという共通の価値を持ちながらも、相手への遠慮や対立を避けたい気持ちから、発言や提案を諦めることがあると説明しています。立場の差による言いにくさは、個人の勇気だけの問題ではありません。
3.確認する時間がないように感じるから
投薬、処置、移送などが進んでいる最中は、「今止めたら流れを乱す」と感じます。しかし、患者さんへ影響する可能性があるなら、短くても実施前に確認する方が重要です。
4.「告げ口」と「安全の相談」が混ざるから
先輩のミスを上司へ伝えると、相手を悪く言うようで抵抗があるかもしれません。
安全の相談では、「誰が悪いか」ではなく、「何を見たか」「何が一致しないか」「すでに何を確認したか」を共有します。陰で評価を広めることと、必要な報告は別です。
まず緊急度を分けます
違和感に気づいたら、相手への言い方を長く考える前に、患者さんへの影響が差し迫っているかを見ます。
| 状況 | 最初の行動 |
|---|---|
| 実施前で、直ちに患者さんへ影響する可能性がある | その場で止めて短く確認する |
| すでに実施され、患者さんへの影響が考えられる | 状態確認とリーダー・上司への報告を優先する |
| 記録や手順の違いで、直ちに影響しない | 落ち着いて事実を再確認し、適切な相手へ相談する |
| 自分では緊急度を判断できない | 「緊急度を判断できず困っています」と早めに相談する |
患者さんの状態が変化している、誤投与・誤処置の可能性があるなど、すでに影響が生じている場合は、先輩との関係をどう保つかより、勤務先の緊急報告経路に従ってください。
患者さんへの影響が差し迫る場合は、遠回しな表現を続けず、「いったん止めてください。患者さんの安全について確認が必要です」と明確に伝え、リーダーや上司へ応援を求めてください。具体的な初動は勤務先の医療安全マニュアルを優先します。
関係を壊しにくい確認の4ステップ
ステップ1.人前で評価せず、必要な相手へ直接伝える
可能であれば、患者さんや他の職員の前で「先輩、間違えています」と言わず、対象の先輩へ短く直接伝えます。
ただし、緊急時に場所を移すことで対応が遅れるなら、その場で安全確認を優先します。配慮のために報告を遅らせないでください。
ステップ2.観察した事実を一つに絞る
「何かおかしいです」「それ危なくないですか」だけでは、相手が何を確認すればよいか分かりません。
- 「指示画面では○mgと表示されています」
- 「患者さんのリストバンドと薬袋の氏名が一致していません」
- 「記録では右側となっていますが、今確認しているのは左側です」
このように、自分が見た情報を短く示します。患者情報を声に出す場所や方法は、個人情報保護の院内ルールに従ってください。
ステップ3.質問の形で立ち止まる
「私の理解が違っていたら教えてください。この指示と今の準備は一致していますか」
「安全のため、実施前にもう一度一緒に確認してもよいですか」
「なぜそんなことをしたのですか」という原因追及ではなく、今進めようとしている行動を確認します。
ステップ4.確認結果と次の行動を復唱する
相手から説明を受けたら、「では、○○を確認してから実施するということですね」と次の行動をそろえます。
自分の勘違いだった場合も、「確認できて安心しました。ありがとうございます」で終えて構いません。必要以上に謝り続けると、次に確認することが怖くなります。

確認して問題がなかった場合も、その確認は無駄ではありません。曖昧なまま進めなかったことが、安全を守る行動です。

一度伝えても解決しないときは、同じ懸念を明確に伝え直します
「大丈夫」「いつもこうしている」と返されても、患者さんへの懸念が残ることがあります。その場合は、一度で引き下がらず、理由を添えてもう一度伝えます。
「承知しました。ただ、患者さんの識別情報が一致していない点がまだ気になっています。実施前にリーダーにも確認したいです」
AHRQのTeamSTEPPSでは、安全上の懸念を伝える方法として、懸念を示し、不安な理由を伝え、安全の問題であることを明確にするCUSや、懸念が聞き入れられない場合に再度伝えるTwo-Challenge Ruleが紹介されています。
日本の勤務先で同じ用語を使う必要はありません。考え方として、「一度言ったから終わり」にせず、懸念が解消されなければ言葉を明確にし、指揮命令系統に沿ってリーダー・上司へ相談します。
伝え直すときの順番
- 何が一致していないかを再度伝える
- 患者さんへの懸念を明確にする
- いったん実施を止めるよう依頼する
- リーダー・上司・医療安全担当者などへ相談する
先輩の許可を得なければ上司へ相談できないわけではありません。患者さんへの影響が考えられ、懸念が解消されない場合は、院内の報告経路を使ってください。

場面別の伝え方
以下は言葉の組み立て例です。実際には患者さんの状態と勤務先の手順に合わせてください。
薬剤・患者情報が一致しないように見えるとき
「実施前に確認です。薬袋はAさんですが、今確認している患者さんはBさんです。いったん照合してもよいですか」
指示と準備内容が違うように見えるとき
「私の見方が違うかもしれませんが、指示には○○とあります。今の準備内容で合っているか、一緒に確認させてください」
実施後に気づいたとき
「○時に実施した内容について、指示との不一致に気づきました。患者さんの状態を確認し、リーダーへ報告したいです」
記録上の誤りらしきものに気づいたとき
「この記録の日時と実施時間が違うように見えます。訂正方法を確認してもよいですか」
記録を本人に無断で書き換えたり、事実を合わせるために自分の記録を変更したりしないでください。訂正・追記は院内規定に従います。
先輩から強く返されたときの対応
勇気を出して確認したのに、「新人なのに口を出さないで」「そんなことも分からないの」と返されると、次から声を上げるのが怖くなります。
その場では言い合いを続けず、患者さんの安全確認を優先します。落ち着いた後、次の点を事実として教育担当者や上司へ相談してください。
- いつ、どこで起きたか
- 何が一致しないと感じたか
- 自分がどのように確認したか
- どのような返答があり、懸念が解消したか
- 患者さんへの対応はどうなったか
「先輩が怖い」だけでなく、必要な確認ができない状況を具体的に伝えます。同じことが続き、報告を妨げられる場合は、直属の上司以外の相談窓口や医療安全管理部門を利用することも検討します。

関係を守ることは大切ですが、確認できない関係に自分を合わせ続ける必要はありません。安全に必要な声を上げられる環境かも、組織が考える課題です。

確認したあとの振り返り方
自分の勘違いだった場合も、先輩の確認漏れだった場合も、次の3点を振り返ります。
- 何を見て違和感を覚えたか
- どの言葉なら相手が立ち止まりやすかったか
- 次に同じ場面があれば、誰へどの順番で伝えるか
「先輩に嫌われたかもしれない」という推測だけを繰り返さず、確認できた事実と次の行動へ戻します。
必要な報告やインシデントレポートの扱いは、勤務先の規定に従ってください。確認した内容を同僚との雑談で広げることは避けます。
よくある質問
自分の勘違いだったら、先輩に失礼ではありませんか?
断定せず、安全確認として尋ねれば、勘違いでも必要な照合になります。「私の理解が違っていたら教えてください」と前置きし、見えた事実を伝えてください。
先輩へ直接言わず、最初からリーダーへ相談してもよいですか?
緊急度、自分と先輩の状況、院内の報告経路によって異なります。患者さんへの影響が差し迫る、直接伝えても止まらない、強い威圧があり一人では安全に話せない場合は、リーダーや上司へ早めに相談してください。
先輩がミスを隠そうとしているように感じたらどうしますか?
意図を推測して本人と争うのではなく、確認した事実、患者さんの状態、必要な対応を上司・医療安全担当者へ速やかに報告します。記録や物品を自己判断で変更せず、院内手順に従ってください。
患者さんの前で確認してもよいですか?
可能なら患者さんを不安にさせない場所と表現を選びます。ただし、安全上の対応を遅らせてはいけません。その場で止める必要があれば、短く確認し、詳しい話は場所を移して行います。
まとめ|先輩を評価するのではなく、安全のために事実を確認します
新人看護師が先輩のミスらしき場面に気づいても、自分の知識への不安や関係悪化への恐れから、声をかけにくいことがあります。
それでも患者さんへの影響が考えられる場合は、立場より安全を優先します。
- 「間違っています」と断定しない
- 見えた事実を一つ伝える
- このまま進めてよいか確認する
- 懸念が残れば、もう一度明確に伝える
- 解決しなければリーダー・上司へ相談する
自分の勘違いだったとしても、確認できたことは失敗ではありません。安全上の違和感を言葉にできることも、チームの一員として必要な力です。
この記事を読んだ方におすすめの記事






コメント