退院予定の患者さんを受け持ったとき、先輩から「退院支援も考えておいてね」と言われる。
それでも、新人看護師の頃は、何を確認して、誰に相談し、看護計画へどう反映すればよいのか分かりにくいものです。
「家に帰れるかを確認すればいいの?」「介護サービスを知らないとできないの?」と戸惑うこともあると思います。
私も最初は、退院支援をするといっても何をどうすればよいのか、当然分かりませんでした。
退院支援は、新人看護師が一人で退院先やサービスを決める仕事ではありません。病棟で見えている患者さんの状態と、本人・家族が望む生活を整理し、必要な職種へつなぐことが最初の役割です。

この記事では、退院支援を難しいと感じる理由、最初に確認したいこと、迷ったときの相談先、カンファレンスで共有する内容まで順番に整理します。
退院支援は「病院から出る準備」だけではありません
退院支援という言葉から、退院日や転院先、介護サービスの調整を思い浮かべるかもしれません。しかし、その中心にあるのは、患者さんが退院後にどこで、誰と、どのような生活を送りたいのかを考えることです。
日本看護協会の入退院支援研修でも、地域での療養生活を支える視点と、療養の場が変わるときの連携が扱われています。
ここがポイント
退院支援では、次の3つをつなげて考えます。
- 患者さん本人が望んでいる生活
- 現在できることと、退院後に困りそうなこと
- その差を小さくする看護・リハビリ・制度・地域の支援
「退院したあと、その人の生活が続けられるか」を考えることが大切です。

新人看護師が退院支援を難しいと感じる5つの理由
1.病気の情報と生活の情報を結びつける必要があるから
新人の頃は、疾患、治療、検査、バイタルサインなど、入院中の安全を守るための情報を覚えるだけでも精いっぱいです。
退院支援では、そこからさらに「この症状や動作の変化が、自宅での生活にどう影響するか」を考えます。
歩けるかだけでなく自宅に段差があるのか、薬を飲めるかだけでなく誰が準備するのか。情報を生活場面へ置き換える必要があるため、最初から簡単にできなくて当然です。
2.確認する範囲が広いから
退院後の生活には、移動、排泄、食事、服薬、医療処置、通院、家族の介護力、住環境、経済面などが関係します。
すべてを一度に確認しようとすると、何から手をつければよいか分からなくなります。情報を整理する枠組みをまだ持っていないことも、難しさにつながります。
3.誰が何を担当しているのか分からないから
PT、OT、ST、医師、薬剤師、管理栄養士、退院支援看護師、医療ソーシャルワーカーなど、多くの職種が関わります。
新人看護師は、「この困りごとは誰に相談すると前へ進むのか」も覚えている途中です。相談先が分からず、自分だけで答えを出そうとして動けなくなることがあります。
4.患者さんごとに正解が変わるから
同じ疾患や同じADL(日常生活動作)でも、暮らし方や大切にしていることは異なります。
一人暮らしへ戻りたい人もいれば、家族と別の療養先を考える人もいます。自宅で料理を続けたい人と、安全にトイレへ行くことを目標にする人では、必要な支援も変わります。

決まった正解を覚えるだけでは対応できない。これも、退院支援が難しく感じられる理由です。
5.自分から多職種へ相談することに緊張するから
「こんなことを聞いたら、何も考えていないと思われないかな」と、声をかけるのをためらうこともあります。
2026年に公表された新人看護師9名への質的研究でも、専門知識や多職種とのコミュニケーションの難しさが扱われています。一方、連携する職種と内容を知り、患者中心に退院後の生活や環境を整える経験が、連携する力の修得につながっていました。
分からない段階で相談することも、退院支援を学ぶ過程の一部です。
私は「その人が退院後にどう暮らすか」を考えられていませんでした
私も新人の頃は、退院支援をするといっても、何をどうすればよいのか分かりませんでした。
その後、退院支援には、患者さんがその人らしく社会で再び生活できるように支えることも含まれると分かるようになりました。
「元の生活に戻ったとき、何ができればよいのか」
「今の状態では何に困り、どのような支援があればその人らしく生活できるのか」
この視点を持てるようになってからは、患者さんの生活に合わせた看護計画や、入院中の日常生活そのものをリハビリの機会として捉えた援助を組み立てやすくなりました。
私が勤務していた職場では、PT・OT・STや医師などが参加する経過カンファレンスが定期的に開かれ、必要な支援やサービスを検討していました。
退院支援は誰か一人が完成させるものではなく、患者さんのそばで見つけた情報を持ち寄り、多職種で退院後の生活を考えていくものだと分かるようになりました。

退院支援で最初に確認したい7つのこと
厚生労働省の入退院支援に関する資料では、入院前の生活や家族の状況、継続している医療、介護認定・介護サービスの利用状況、今後の生活に対する意向などが確認項目として示されています。
新人看護師が情報を整理するときは、次の7つに分けると考えやすくなります。
| 確認すること | 具体的な視点 |
|---|---|
| 本人の希望 | どこで誰と暮らしたいか、続けたいこと、心配なこと |
| 入院前の生活 | 住居、階段や段差、移動・排泄・入浴・食事、仕事や家庭での役割 |
| 現在の状態 | 症状、認知・理解、コミュニケーション、ADL、必要な介助量 |
| 退院後も続く医療 | 服薬、処置、食事療法、リハビリ、通院、体調悪化時の連絡先 |
| 家族・支援者 | 同居者、支援できる時間と内容、健康状態、本人・家族の不安 |
| 利用中の支援 | 介護保険、ケアマネジャー、訪問看護、訪問介護、福祉用具など |
| まだ決まっていないこと | 退院時期、療養先、指導の進み具合、調整が必要な課題 |
すべてを一度の会話で聞く必要はありません。清潔援助、排泄介助、食事、リハビリ後など、日々の関わりの中で少しずつ確認します。
例えば、歩行を見ながら「ご自宅ではトイレまでどのくらいありますか」、服薬時に「入院前は薬をどのように準備していましたか」と尋ねると、現在の能力と生活環境を結びつけやすくなります。

「退院支援の情報を全部集める」と考えるより、「この人が家で一日を過ごす場面を順番に想像する」と、確認したいことが見えやすくなります。
何に困ったら誰へ相談すればいい?
職種の配置や役割分担は病院によって異なります。まずは自分の病棟での相談経路を確認してください。そのうえで、一般的には次のように整理できます。
| 相談したいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 何から確認するか、相談の優先度、院内の進め方 | プリセプター、先輩看護師、リーダー、師長 |
| 治療方針、医学的な見通し、退院後の制限、継続する医療 | 主治医・担当医 |
| 退院支援全体の調整、在宅療養や転院、院内外との連携 | 退院支援看護師、入退院支援部門 |
| 医療費、生活費、福祉制度、仕事、施設・転院先などの社会生活上の問題 | 医療ソーシャルワーカー(MSW) |
| 起き上がり、移乗、歩行、階段、福祉用具 | 理学療法士(PT) |
| 更衣・排泄・入浴・家事などの生活動作、認知面、退院後の役割 | 作業療法士(OT) |
| 会話や意思疎通、嚥下、高次脳機能に関すること | 言語聴覚士(ST) |
| 薬の管理方法、飲み方、剤形、一包化など | 薬剤師 |
| 食事形態、栄養量、退院後の食事管理 | 管理栄養士 |
| 入院前の生活、利用中のサービス、在宅で継続できる支援 | ケアマネジャー、訪問看護師など地域の支援者 |
相談先を決められないときは、先輩や病棟リーダーへ「退院後に○○が問題になりそうですが、どの職種へつなげればよいですか」と確認します。
制度やサービスをすべて知るより、「どの生活場面で困りそうか」を言葉にして、適切な人につなぐことが大切です。

カンファレンスでは完成した答えを話さなくて大丈夫です
経過カンファレンスで発言を求められると、「具体的なサービスまで提案しなければ」と思うかもしれません。
しかし、新人看護師がまず共有したいのは、日々の看護で見えた事実と、退院後に気になる生活上の差です。
次の5つに分けると伝えやすくなります。
- 本人・家族が希望していること
- 入院前にできていたこと
- 現在できることと必要な介助
- 退院後に困りそうだと考えたこと
- 多職種に確認・相談したいこと
共有例
分かっていることと分からないことを分ければ、多職種も意見を出しやすくなります。
例えば、次のように共有できます。
「本人は自宅退院を希望しています。入院前は一人でトイレへ行っていましたが、現在は移乗に介助が必要です。家族は介助方法に不安を抱えています。自宅で必要な移動能力と福祉用具についてPT・OTさんへ、利用できる支援について退院支援部門へ相談したいです」

日常の看護も退院支援につながっています
退院支援は、カンファレンスや退院前指導の日だけに行うものではありません。
トイレまで歩く、着替える、薬を確認する。入院中の一つひとつの行動が、退院後の生活につながっています。
看護計画を「ADLを拡大する」だけで終わらせず、「自宅のトイレまで安全に移動できる」など、その人の生活に合わせた目標へ置き換えます。
どこで疲れたか、どの声かけで動けたか、何を不安に感じたかも記録し、多職種へ共有します。

病棟看護師だからこそ、リハビリ以外の様子や、本人がふと話した希望をチームへ届けられます。
早めに相談したいサイン
次のような状況がある場合は、自分だけで様子を見続けず、先輩や退院支援部門へ早めに共有します。
- 入院前よりADLや認知機能が低下している
- 退院後も医療処置や継続的な観察が必要になる
- 一人暮らし、または支援できる家族が少ない
- 本人と家族で退院先や支援への希望が異なる
- 家族が介護への強い不安や負担を話している
- 住環境、費用、仕事、制度利用などの問題がある
- 退院時期が近いのに、療養先や必要な指導が決まっていない
- 虐待や権利侵害など、安全に関わる心配がある
厚生労働省の資料でも、入院前よりADLが低下して生活の再編が必要な場合、十分な介護を受けにくい場合、退院後も医療処置が必要な場合などが退院支援を検討する視点として挙げられています。
ただし、介入基準や連絡時期は病院によって異なります。院内のスクリーニング票や手順を確認し、判断に迷った段階で相談してください。
FAQ
Q.退院支援はいつから始めればよいですか?
退院日が決まってからではなく、入院時から退院後の生活を意識して情報を集めます。特に入院前よりADLが低下した場合や、退院後も医療・介護が必要になりそうな場合は早めに共有します。具体的な開始時期は院内の手順に従ってください。
Q.介護保険やサービスの知識がなくても退院支援はできますか?
新人看護師が制度を一人ですべて説明・調整する必要はありません。患者さんがどの生活場面で困りそうかを整理し、退院支援看護師やMSWなどへつなぐことから始められます。
Q.患者さんと家族の希望が違うときはどうすればよいですか?
どちらかの希望を看護師だけで正しいと決めず、それぞれが何を望み、何を不安に感じているかを分けて確認します。その内容を先輩や主治医、退院支援部門へ共有し、必要に応じて話し合いの場を設けます。
Q.カンファレンスで意見が思いつきません
完成した支援案を出さなくても大丈夫です。「本人の希望」「現在できること」「退院後に困りそうなこと」「確認したいこと」を伝えてみてください。日常の看護で見た患者さんの様子は、多職種が支援を考えるための大切な情報です。
まとめ
新人看護師が退院支援を難しいと感じるのは、病気だけでなく、生活、家族、住環境、医療、制度まで視野を広げる必要があるからです。
サービス名や調整方法をすべて知る必要はありません。
次の3点を整理します。
- 患者さんは退院後にどのような生活を望んでいるか
- 入院前の生活と現在の状態に、どのような差があるか
- その差について、誰の専門的な意見が必要か
私も、「その人がその人らしく社会で再び生活するための支援」と考えられるようになってから、看護計画や日常の生活リハビリを組み立てやすくなりました。

患者さんのそばで見つけた事実をチームへつなぐことも、病棟看護師が担う退院支援です。
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
参考資料
- 厚生労働省「入院(その7)」中央社会保険医療協議会 総会(第559回)資料、2023年11月27日
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001178970.pdf - 厚生労働省「入退院支援の流れとポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001013512.pdf - 日本看護協会「研修番号108:療養生活を支え、看護をつなぐ入退院支援」、2026年度
https://www.nurse.or.jp/nursing/training/search/2026/108.html - 上原陽子・花田妙子「大規模病院の新人看護師が退院支援において多職種と連携する能力の修得」『日本看護学教育学会誌』36巻1-2号、57-69頁、2026年
https://doi.org/10.51035/jane.36.1-2_57
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