はじめに
「次から夜勤、独り立ちだね。」そう言われても、うれしいより先に不安が出てきませんか?
- 「まだ一人で判断できないことが多いのに大丈夫かな」
- 「急変したらどうしよう」
- 「夜中に何か起きたとき、ちゃんと動けるかな」
勤務表が出ると、まず夜勤の日を確認する。その次に、一緒に入る先輩の名前を見る。
話しかけやすい先輩なら少し安心するけれど、質問しにくい先輩だと分かっただけで、何日も前から気持ちが重くなることもありました。

私も新人の頃、夜勤の独り立ちにはかなり緊張していました。
なぜなら頼れる人が少ない状態で、自分の知らない何かが起きることが怖かったからです。
夜勤の独り立ちが怖いからといって、それだけで看護師に向いていないとは言えません。

この記事では、なぜ夜勤の独り立ちが怖くなるのか、その不安とどう付き合えばよいのかを整理していきます。
夜勤の独り立ちが怖いのは「自分だけで判断する場面」が増えるから
夜勤は、日勤と同じ仕事を夜にするだけではありません。
日本看護協会は、夜勤・交代制勤務には日中とは異なる負担があり、勤務編成や休息、健康管理などを含めた対策が必要だとしています。
日勤なら、病棟にはリーダーや先輩、師長や主任、医師、他職種など多くの人がいます。
分からないことが起きても、周囲を見れば誰かに確認できることがあります。
ところが夜勤では、病棟にいるスタッフが少なくなります。その一方で、一人の看護師が受け持つ患者さんは増えることがあります。
すると、
- 「見落としが無いようにしないと!」
- 「この血圧は報告した方がいい?」
- 「もう少し様子を見ても大丈夫?」
と、一つひとつの判断が急に重く感じられます。
新人のうちは、判断の基準そのものを経験から作っている途中です。
だから夜勤では、患者さんの状態を見ることに加えて、「自分の判断は合っているのか」まで考え続けることになります。
夜勤が終わるころに、身体だけでなく頭まで疲れているのは、そのためでもあると思います。

患者さんを見ること以上に、「この判断で本当に大丈夫かな」と考え続ける方がしんどい日もありました。
日勤者が帰り始めると、病棟が急に広く感じる
夜勤で特に緊張しやすいのが、日勤者が帰り始める時間です。
申し送りが終わり、先輩たちが「お疲れさまでした」と帰っていく。さっきまで人でいっぱいだったナースステーションから、一人ずつスタッフが減っていく。

同じ病棟なのに、「ここから朝まで、この人数なんだ…」と思った瞬間、急に病棟が広く感じることがあります。
夜勤では、眠前薬、点滴、血糖測定、排泄介助、巡視など、時間の決まった仕事があります。
そこへナースコールや不穏、転倒リスクの高い患者さんへの対応など、予定していなかった仕事が重なります。
一つ対応している間に、別の仕事が遅れることもあります。
すると新人の頃は、「全部終わらないかもしれない」と焦りやすくなります。

でも夜勤で大切なのは、予定を一度も崩さないことではありません。
予定が崩れたときに、何から戻すかを考えることです!
生命や安全に関わること、時間が決まっていること、少し待てること。迷ったら優先順位を整理し、自分だけでは回らないと感じた時点で早めに周囲へ声をかけます。
本当に怖かったのは「何も起きていない時間」だった
私自身、夜勤の独り立ちで特に怖かったのは、先輩が仮眠に入る時間でした。
先輩が休憩へ向かうと、「もし今、何か緊急事態が起きたらどうしよう」と考えていました。
何かが起きたわけではありません。患者さんの状態が急に悪くなっていたわけでもありません。

それでも、「今だけは何も起きないでほしい」「先輩が戻ってくるまでは急変しませんように」と思っていました。正直に言うと、今でもそう思います。
ナースコールが鳴るだけで少し身構え、モニターを見て、時計を見る。
結局その日は何事もなく、朝になって日勤の看護師たちが出勤してきたとき、「よかった…」と思いながら帰りました。
今振り返れば杞憂でした。
でも当時は、何も起きていない時間にもずっと緊張していたのだと思います。
夜勤の怖さは、実際に起きた出来事だけではありません。
「このあと何か起きるかもしれない」と待っている時間にもあります。
まだ経験していない出来事ほど、頭の中では大きくなりやすいのです。
「独り立ち」は、一人で全部やるという意味ではない
「独り立ち」という言葉を聞くと、
- 「もう分からないことは聞いてはいけない?」
- 「これくらい自分で判断しないといけないのかな?」
- 「先輩に頼ったら独り立ちした意味がない?」
と思ってしまう方もいるのではないでしょうか。
でも、独り立ちと「一人で抱えること」は別です。
新人看護師の夜勤導入に関する研究では、独り立ちの判断に、報告・連絡・相談ができることや、必要時に他のメンバーへ声をかけられることなどが含まれていました。
厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」でも、新人看護職員が臨床実践能力を段階的に身につけられるよう、組織として研修・支援体制を整える考え方が示されています。
つまり、何でも一人で処理できることだけが独り立ちではありません。
新人だから確認していい。独り立ちした後も、迷ったら相談していい。その判断まで含めて、少しずつ独り立ちしていくのだと思います。


「助けてもらわないこと」が独り立ちではなく、「助けが必要な場面を判断できること」も独り立ちなのです。
夜勤前は「全部勉強する」より、今夜の危険地図を作る
不安になると、夜勤前に疾患も薬も急変対応も全部復習したくなります。
でも、分からないことを全部なくしてから夜勤へ行こうとすると、いつまでたっても安心できません。
そこで意識したいのが、**「今夜の危険地図を作る」**ことです。
たとえば、
を勤務の早い段階で整理します。
そして分からないことは「この患者さんは夜間、何を一番注意したらいいですか?」「この状態になったら医師へ報告しますか?」と先に確認しておきます。

特に私のように、先輩が仮眠に入る時間が怖い人は、その前に気になることを一つでも確認しておくと安心しやすくなります!
すべてを予測することはできません。
それでも、「何か起きたらどうしよう」という大きな不安を、「この患者さんについて、ここだけ確認しておこう」という小さな行動へ変えることはできます。
同期より夜勤独り立ちが遅くても、それだけで遅れているとは言えない
同期が先に独り立ちすると、「自分だけまだフォローがついている」「まだ認められていないのかな」と焦ることがあります。
しかし、夜勤の独り立ち時期は一律ではありません。
急性期病院を対象にした研究では、夜勤独り立ちは主に9~10月にみられましたが、導入時期や指導方法には施設差があり、看護実践能力や教育体制も関係していました。
病棟が違えば、患者さんの重症度も、夜勤人数も、教育方法も違います。
だから、「同期が独り立ちした=自分も同じ時期にできなければならない」とは限りません。
比べるなら、同期ではなく少し前の自分です。

「あの患者さんの変化に前より早く気づけた」「迷ったときに前より早く相談できた」
そうした小さな変化も、夜勤を任されるための成長です。
何回夜勤をしても怖いなら「夜勤」と「職場」を分けて考える
夜勤独り立ち直後に怖いのは、経験を重ねることで少しずつ変わっていく可能性があります。
「何が起きるか分からない」が、「前にも似た場面があった」に変わっていくからです。
ただし、
という状態なら、不安の原因は夜勤だけではないかもしれません。
「自分が夜勤できない」のではなく、「安心して夜勤を覚えにくい環境にいる」可能性もあります。
知識や経験への不安なのか。
それとも、相談できない環境への不安なのか。
ここを分けて考えることが大切です。

夜勤が怖い原因を、全部「自分の能力不足」にしなくてもいいと思います。相談できる環境かどうかも大切です!
よくある質問
Q. 夜勤独り立ちが怖いのですが、まだ待ってほしいと伝えてもいいですか?
不安の内容を具体的にして、教育担当者や上司へ相談してよいと思います。
「夜勤が怖いです」だけではなく、「急変時の報告にまだ不安があります」「複数患者の優先順位に自信がありません」など、何に不安を感じているのか伝えてみてください。
夜勤独り立ちは、単に一定の月日が経過したことだけではなく、実践能力や指導体制とも関係しています。
Q. 夜勤は何月頃に独り立ちするのが普通ですか?
全国共通の「○月までに独り立ち」という基準があるわけではありません。
急性期病院を対象とした研究では主に9~10月に夜勤独り立ちがみられましたが、施設や病棟によって夜勤開始時期や教育方法は異なります。
時期だけで自分の成長を評価する必要はありません。
Q. 夜勤中、先輩が仮眠していても相談していいですか?
患者さんの安全に関わることや、自分だけでは判断できないことを「休憩中だから」という理由だけで抱え込む必要はありません。
緊急性がある場合は、患者さんの安全を優先してください。

どの程度の状況で先輩を呼ぶのかは部署の体制やルールによっても異なるため、夜勤前に確認しておくと安心です。
Q. 夜勤が怖いなら看護師に向いていないのでしょうか?
夜勤への不安だけでは、看護師に向いていないとは言えません。
病院や病棟によって条件は大きく異なります。

「今の職場での夜勤が苦手」と「看護師そのものに向いていない」は、分けて考えてみてください!
まとめ|夜勤の独り立ちは「一人で抱える日」ではありません
新人看護師が夜勤の独り立ちを怖いと感じるのは、自信がないからだけではありません。
日勤者が帰り、病棟に残る人数が少なくなる。受け持つ患者さんが増え、夜中に何が起こるか分からない。その中で「自分も判断しなければいけない」と感じるから怖いのだと思います。
私も先輩が仮眠に入ると、「このタイミングで何か起きたらどうしよう」と考えていました。結局、何も起きないまま朝を迎えましたが、その「何も起きていない時間」にもずっと緊張していました。
でも、夜勤の独り立ちは、「今日から何でも一人でやってください」という意味ではありません。
異変に気づく。迷ったら確認する。一人では難しいと判断する。必要なときに人を呼ぶ。
それも全部、患者さんを守るための看護です。
最初は時計を見て「まだ2時か…」と思っていた夜勤も、経験が増えるにつれて、「このときはこうすればいい」という記憶が少しずつ増えていきます。
焦らなくて大丈夫です。

夜勤の独り立ちは、全てを一人で抱えるための独り立ちではありません。
必要なときに人を頼ることも含めて、少しずつ一人前の看護師になっていくのだと思います。
そして朝になると続々と日勤のメンバーが出勤してきます。
そうすると、少しホッとする気持ちになると思います。
ここまで来れば長い夜勤も終わりが近いです。
後のことは日勤メンバーに引き継ぎ、家に帰ってゆっくり休みましょう。

この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
おすすめ記事
1. 新人看護師が「同期と比べてしまう」のは普通?|自分だけできない気がするあなたへ
夜勤の独り立ち時期を同期と比べて焦ってしまう方へ。

2. 新人看護師が休みの日も仕事のことばかり考えてしまう理由|頭が休まらないあなたへ
夜勤が終わっても次の勤務のことを考え続けてしまう方へ。

3. 新人看護師が「いつまでたっても慣れない」と感じる理由
周囲は慣れてきているのに、自分だけ成長していないように感じる方へ。

4. 新人看護師がつらいと感じているあなたへ
仕事そのものがつらくなり、「このままで大丈夫かな」と感じている方へ。

参考資料
厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン改訂版について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049578.html
公益社団法人 日本看護協会「夜勤・交代制勤務の負担軽減に向けて」
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/yakinkotai/index.html
宮坂佐和子・金子さゆり「新人看護師の夜勤独り立ち時期と夜勤独り立ちにおける看護実践能力および新人指導体制との関連」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/janap/26/1/26_201/_article/-char/ja/
富樫恵美子・西村宣子「新人看護師の夜勤導入におけるマネジメントの実際」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cpu/14/1/14_1_92/_article/-char/ja


コメント