申し送りの時間が近づくだけで心拍が上がり、準備したはずの内容が頭から消える。先輩の表情を見た瞬間、「また質問される」「うまく答えられない」と言葉が止まる。そんな状態が続くと、申し送りだけでなく勤務全体が怖くなります。
新人看護師が申し送りを怖いと感じるのは、話すことが苦手だからとは限りません。何を残し、何を省くかの判断基準がまだ定まらないうえ、質問された過去の記憶や、評価される緊張が重なっていることがあります。
結論からいうと、申し送りは患者さんの情報を最初から最後まで説明する場ではありません。
「次の勤務者が安全に看護を続けるために、今知らないと困る変化と残っている項目を渡す」と考えると、内容を絞りやすくなります。

この記事では、私の新人時代の経験をもとに、準備・伝え方・質問されたときの対応を整理します。
新人看護師が申し送りを怖いと感じる理由
何を伝えるべきかの境界が分からない
カルテには病歴、治療、検査、食事、排泄、処置など多くの情報があります。抜けを恐れるほど全部を話したくなりますが、情報が多いと重要な変化が埋もれます。新人のうちは「知っている情報」と「次の勤務者が今必要な情報」を分ける経験が少ないため、長くなったり、反対に大事な点を落としたりします。
質問を「確認」ではなく「責められている」と感じる
初めてフォローの先輩へ申し送りをしたとき、私は患者さんの状態、食事量、ラウンド時の様子など、集めた情報を順に伝えようとしました。すると「で?それは何?」「なんでそれを私に申し送るの?」と聞かれ、頭が真っ白になりました。
さらに「この前、〇〇さんのシャドーについた時に何を学んだの?」と問われても、言葉が出ませんでした。勤務後は悔しさと怒りが残り、その後は申し送りの時間が近づくだけで心拍が上がるようになりました。
内容を考えるより、また同じように言われないことへ意識が向いていたのだと思います。

緊張で知っていることまで取り出せなくなる
準備中は説明できたのに、人前では言葉が途切れることがあります。そこで「覚えていない」と焦ると、さらに頭の中を探し続けて沈黙が長くなります。これは、その場で伝えられなかった事実ではありますが、看護知識がまったくない証明ではありません。
申し送りは「変化・対応・残っていること」に絞る
病棟ごとの決まりが最優先ですが、迷ったときは次の3点で整理します。
- 変化:前勤務や普段と比べて何が変わったか
- 対応と反応:何を行い、患者さんがどう変化したか
- 残っていること:観察、処置、検査、医師への確認など次勤務へ渡す事項
例えば「昼から痛みが強く、鎮痛薬を使用した。30分後は数値が下がり眠れている。次回訪室時に再評価をお願いしたい」のように、変化から未完了事項までを一続きにします。実際の薬剤名や観察項目は患者さんの状態と病棟基準に合わせてください。
反対に、電子カルテを見れば分かり、当日の安全や予定に影響しない情報まで時系列で読み上げる必要があるかは再検討できます。
私は経験を重ねて「すべての情報を言うのではなく、変化を中心に渡す」と分かってから、怖さが少しずつ下がりました。

申し送り前に5分で作るメモの順番
1.最初の一文を先に書く
患者さんごとに「今日いちばん注意してほしいこと」を一文で書きます。最初の一文が決まると、詳細がその説明に必要かどうか判断しやすくなります。特に変化がなければ、「大きな状態変化なし。継続して見る点は〇〇」と置けます。
2.数字は比較できる形にする
体温や血圧などを並べるだけでなく、「いつもより」「対応前後で」「目標と比べて」を添えます。ただし、すべての数値を暗記する必要はありません。正確さが必要な情報はメモやカルテを確認しながら伝えます。記憶力を試す時間にしないことが大切です。
3.未確認のことに印をつける
医師の指示待ち、検査結果待ち、家族への連絡など、完了していないものは一か所に集めます。申し送り直前に一度見直し、「自分が終えるもの」と「次勤務へ依頼するもの」を分けます。曖昧なまま渡さず、誰が何をするかまで確認します。
質問されたときに頭が真っ白になったら
すぐに答えが出ないときは、無理に言葉を埋めなくて構いません。質問を短く言い換え、「〇〇についての確認で合っていますか」と聞きます。そのうえで、次のどれかを使います。
- 「そこは確認できていません。今、カルテを確認します」
- 「私の判断では〇〇ですが、根拠を含めて先輩に確認したいです」
- 「結論から言い直します。変化は〇〇です」
分からないことを分からないと答えるのは、安全を守る行動です。ただし、確認し忘れが続く項目は、次回の情報収集表へ追加します。「答えられなかった自分」を責めるだけで終わらせず、仕組みに変えます。

指導が怖いときは内容と伝え方を分けて考える
指摘の内容に学ぶ点があっても、人前で繰り返し威圧する、人格を否定する、質問する機会を与えない指導まで我慢する必要はありません。「申し送りの基準を教えてほしい」「質問は一つずつ確認したい」と教育担当者へ相談し、可能なら見本やチェックリストを共有してもらいます。
申し送り以外でも先輩へ話しかけられない人は、質問を短く準備する方法から整理すると動きやすくなります。

支援方法を調整すれば学べるなら、現在の部署に残る選択があります。部署独自の申し送り方法や指導者との組み合わせで負担が強いなら院内異動、組織全体で威圧的な指導や相談不能な状態が続くなら転職も比較できます。転職サービスは、すぐ辞めるためだけでなく、教育体制や申し送り方法を求人側へ確認する情報収集にも使えます。
申し送りの前夜から眠れない、食欲が落ちる、涙や動悸が続く、出勤が難しいなど生活への影響が続く場合は、一人で抱えず上司、教育担当者、産業保健スタッフや医療機関へ相談してください。

※以下は広告を含みます。登録は転職を決める手続きではなく、教育体制を比較する情報収集としても利用できます。
勤務帯ごとに変わる「相手が次に困ること」を考える
日勤から夜勤なら、夜間に起こりやすい変化、眠前薬、安静度、夜間の排泄や不穏への対応などが重要になることがあります。
夜勤から日勤なら、夜間の変化に加え、朝の検査・処置、医師へ確認してほしい事項などが次の行動につながります。

ただし、何を必須とするかは病棟で異なります。教育担当者に標準的な例を示してもらうことが医療安全につながります。
録音や丸暗記に頼る前に確認したいこと
申し送りを録音して練習したくなるかもしれませんが、患者情報や職場の会話を個人端末へ録音することは、個人情報や院内規定の問題があります。許可なく録音せず、架空の事例や情報を消した型で練習します。
文章を丸暗記すると、一つ質問されたあと元へ戻れなくなることがあります。「結論」「変化」「対応」「依頼」の見出しだけをカードにし、自分の言葉で順番を変えず話す練習が現場で使いやすいです。
申し送り後の指摘を次回へ残す方法
指摘を受けたら、患者情報を除いた形で「不要だった情報」「不足した情報」「次回の最初の一文」を一つずつ書きます。先輩によって意見が違う場合は、両方を暗記するのではなく、病棟の標準と責任者へ確認します。
毎回すべてを直そうとせず、その日は「結論を先に言う」など一項目に絞ります。改善点が具体的になれば、申し送りの時間を自分の評価の場ではなく、看護をつなぐ作業へ戻しやすくなります。
申し送り直前の最終チェック
- 最初の一文で重要な変化が伝わるか
- 対応後の反応まで入っているか
- 次勤務への依頼と期限が明確か
- 未確認の内容を事実のように話していないか
この四つを数十秒で確認できるよう、メモの記号や配置をそろえます。追加情報が判明した場合は、記録しただけで終わらせず、必要な相手へ確実に伝えます。
途中で質問されても、順番が崩れたことを失敗にしなくて大丈夫です。

答えたあと「申し送りを続けます。次は…」と見出しへ戻ります。戻る言葉を決めておくと、最初からやり直さずに済みます。
FAQ
申し送りが長いと言われます。どこから削ればよいですか?
まずカルテを見れば分かる経過の読み上げを見直します。次勤務の安全や予定に関係する変化、対応後の反応、未完了事項を残し、病棟の見本と比べてください。削る判断も教育担当者に確認できます。
何も変化がない患者さんは、何を伝えればよいですか?
「大きな変化なし」としたうえで、継続観察が必要な点、当日の予定、未完了事項を簡潔に伝えます。省略できる範囲は病棟で異なるため、先輩の表現を一度書き留めて確認してください。
メモを見ながら話すのは頼りなく見えますか?
正確な情報を渡すためのメモは問題ありません。紙に患者情報を残す場合は勤務先の個人情報管理ルールに従い、持ち出しや廃棄方法も確認します。
読み上げ続けず、要点ごとに相手を見ると伝わりやすくなります。
まとめ
申し送りが怖い背景には、要点の基準が分からないことと、質問や過去の指導への緊張があります。
次の勤務では、患者さん一人につき「変化・対応と反応・残っていること」の3つだけ先に書いてみてください。完璧に話すより、次の勤務者が安全に続けられる情報を正確に渡すことが目的です。

先輩がどんな申し送りをしているかを聞いてみると参考になることもたくさんあると思います!
この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
参考資料
- 「Patient Safety Solution: Communication during patient handovers」World Health Organization、2007年
- 「新人看護職員研修ガイドライン改訂版」厚生労働省 2014年
- 「こころの耳の相談窓口」厚生労働省
おすすめ記事
報告する内容を短く整理できず困っている人へ。医師への報告にも使える準備の考え方を確認できます。

質問されると、その場で動きも言葉も止まる人へ。固まった瞬間の最初の一手を整理できます。

先輩へ確認したいのに、忙しそうで声をかけられない人へ。短い相談の作り方を紹介しています。

指導の場面を帰宅後も何度も思い返してしまう人へ。勤務と休息を区切る方法を確認できます。



コメント