はじめに
「仕事についていけないのは、私だけなのかな」
朝は病院へ向かうだけで気持ちが重い。
勤務中は周囲の顔色を見続け、帰宅すると何もする気力が残っていない。
それでも同期が仕事をこなす姿を見ると、「みんなはできているのに、どうして私は追いつけないんだろう」と思ってしまう――。
新人看護師の頃の私も、「仕事がしんどいな」「先輩と一緒の勤務が怖いな」と感じていました。
それでも、「最低3年」「1年以内に辞めたら次がない」という言葉が頭にあり、辞めたいほどつらいとは誰にも言えませんでした。

私も新人の頃、「覚えるのが遅いのかな」「先輩の指導をこんなにつらく感じるなら、この仕事に向いていないのかもしれない」と考えていました。
でも、仕事を覚えること以上に苦しかったのは、安心して質問も相談もできない環境でした。
「辞めたい」と感じても、今すぐ退職を決める必要はありません。
まずは、その手前にある「ついていけない」「また注意されるかもしれない」「このまま続けられる気がしない」という気持ちを、一つずつ確かめてみましょう。

この記事では、新人看護師が辞めたいと感じる理由を整理し、「今日だけつらい」のか、「今の職場から離れたい」のか、「看護師そのものを続けたくない」のかを分けて考えます。
そのうえで、今の状態に応じてできることをお伝えします。
新人看護師が辞めたいと思うことは、珍しいことではありません
日本看護協会の「2024年 病院看護実態調査」では、2023年度に採用された新卒看護職員のうち、年度内に離職した割合は8.8%でした。
これは実際に離職した人の割合です。
また、厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」には、新人の順応には根気強くあたたかい支援と、職場適応・メンタル面を支える体制が必要だと示されています。
新人のつらさを、本人の覚え方や努力だけで説明することはできません。教え方、相談のしやすさ、業務量、人間関係なども関わります。

「辞めたい」という気持ちは、ある日突然生まれたものではないはずです。
その前にあった「仕事についていけない」「また先輩に注意されそうで怖い」という不安から見ていきましょう!
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まず「何を辞めたいのか」を分けて考えてみましょう
心が疲れていると、異なる苦しさが「辞めたい」という一言に集まります。しかし、中身によって必要な対応は変わります。
| 「辞めたい」の中身 | 隠れている気持ち | 最初に考えたいこと |
|---|---|---|
| 今日の勤務から逃れたい | ミス、叱責、苦手な勤務への一時的な不安 | 今日の体調と安全を確認する |
| 今の職場を辞めたい | 人間関係、教育体制、勤務の継続的な苦しさ | 何が、いつから続いているか整理する |
| 看護師を辞めたい | 「この仕事に向いていないのかもしれない」という迷い、仕事全体への疲労、将来への不安 | 今の職場と看護師という仕事を分けて考える |
「看護師を辞めたい」と「この職場では続けられない」は、同じように見えて別の問題です。


特定の先輩と勤務する日だけ強くなるなら、人間関係や指導環境が中心かもしれません。急性期病棟の速さが合わない場合も、看護師ではなく、現在の領域や働き方が合っていない可能性があります。
新人看護師が「辞めたい」と感じやすくなる5つの理由
覚える量に対して、気持ちが追いつかない
看護技術、薬剤、報告、記録、優先順位を短期間で覚え、複数の患者さんへ同時に実践することには難しさがあります。
できないことが続くと、「私だけ覚えるのが遅いのかな」「この先もついていけないのかな」と感じやすくなります。
失敗よりも、失敗した後の反応が怖い
新人が怖いのは、ミスそのものだけではありません。
「前にも教えたよね」と強く返され続けると、質問や報告の前から緊張し、安全のための確認より、怒られないことを優先するようになります。
同期と比べて、自分だけ遅れているように感じる
同期が落ち着いて報告する姿を見ると、「同じ時期に入ったのに、自分だけ遅れている」と感じることがあります。
そこから「要領が悪いのかもしれない」「看護師に向いていないのかもしれない」と考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、担当患者や指導者、経験は違いますので、一場面だけでは比較できません。
仕事が終わっても、緊張が終わらない
帰宅後もミスを思い返し、休日も次の勤務を心配していれば回復できず、「もう辞めたい」という気持ちが強くなります。
本人ではなく、環境に問題がある
質問すると責められる、人前で怒鳴られる、相談しても放置される環境では、安心して学ぶことができません。

「自分の覚えが悪いのかな」と考える前に、質問や失敗が許される環境になっているかも確かめてください。安心して学べない状況では、できていたことまでできなくなる場合があります!
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辞めるか決める前に、今の状態を4つの質問で整理する
退職するか、無理に続けるかの二択にせず、次の4つを短く書いてみてください。
- 「辞めたい」という気持ちは、いつから続いていますか?
- 休日や連休には、少しでも気持ちが回復しますか?
- 特定の先輩、勤務、業務の日に強くなりますか?
- 睡眠、食欲、涙、動悸、集中力などに普段との違いがありますか?
「三日前のミス」と「数か月前から毎朝動悸がする」では対応が違います。自己診断ではなく、相談や次の行動のための整理です。

今の状態に応じて、今日することを選びましょう
| 今の状態 | 今日の対応の目安 |
| ミスや苦手な勤務の後だけ、一時的に辞めたくなった | 今日だけで結論を出さず、食事と睡眠を取り、出来事と自分自身を分けて考える |
| 辞めたい気持ちが何日も繰り返し、休日も回復しにくい | 日付・きっかけ・症状を記録し、信頼できる人や職場へ早めに相談する |
| 涙、動悸、吐き気、不眠などで生活や出勤が難しい | 退職の結論より心身の安全を優先し、休むことや医療機関・相談窓口の利用を検討する |
体調が崩れているときに、退職後の生活や転職先まで一人で決める必要はありません。まず今日の安全を確保しましょう。

厚生労働省「こころの耳」では、セルフケア情報やストレスチェックのほか、働く人と家族が匿名・無料で利用できる電話、SNS、メール相談が案内されています!
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「辞めたい」と思った今日からできる4つのこと
事実と自分への評価を分けて書く
例えば、「報告で質問に答えられなかった」は、そのとき起きた事実です。
そこから「私は要領が悪い」「この仕事に向いていない」と、仕事全体の結論まで広げていないかを分けて見ます。
「何が起きたか」「何がつらかったか」「何が変わればよいか」を書いてみましょう。
一人だけでも、話せる相手を決める
全員へ話す必要はありません。「辞めると決めていないけれど、今かなりつらい」と一人へ伝えます。職場の人へ話す場合は「いつから」「どの場面で」「どんな影響があるか」を添えると、より。
退職以外の選択肢も並べる
休む、業務調整、指導者の変更、異動、休職、転職などを並べ、「続けるしかない」という思い込みから離れます。
今日、看護師人生の答えを出さない
疲れ切った夜や、叱られた直後に人生すべてを判断しなくて大丈夫です。状態を記録し、相談した結果も含めて考えましょう。
今日決めるのは「辞めるか続けるか」ではなく、「一人で抱え込まないために何をするか」だけでも十分です。

私も「辞めたら人生が終わる」と思っていました
新人時代の私は、病院へ近づくほど動悸が強くなり、勤務表で先輩の名前を見るだけで不安になりました。
それでも、同期が働いている姿を見ると、「私だけついていけていないのかな」「別の職場へ行っても同じなのかもしれない」と考え、周囲へつらいと言えませんでした。
カウンセリングへ通った時期もありました。その後、環境が変わり、安心して質問できることが働きやすさへ大きく影響すると実感しました。
職場が変われば、人間関係も教育体制も変わります。今の病棟で苦しいことと、看護師として働けないことは同じではありません。
「辞めたい」と「転職するべき」は分けて考えてください
この記事で決めるのは、転職するかどうかではありません。
まず何がつらいのかを整理し、自分を守ることが先です。そのうえで、職場内の調整で改善できるのか、環境を変える必要があるのかを考えます。

今の職場は、あなたの看護師人生のすべてではありません。今日つらいことだけで、これから先の可能性まで決めなくて大丈夫です!
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よくある質問
仕事についていけず辞めたいと思うのは、看護師に向いていないからですか?
今の時点で、看護師に向いていないと決めることはできません。
慣れない業務、失敗への緊張、先輩との関係、睡眠不足などが重なれば、本来できることにも集中しにくくなります。
まずは、どの仕事でつまずくのか、誰と働く日に苦しくなるのか、休むと回復するのかを整理してみてください。
1年以内に辞めると、転職で不利になりますか?
短期離職の理由を確認する採用先はありますが、「1年以内に辞めたら次がない」と一律にはいえません。
退職理由を他人のせいだけにせず、何が合わなかったか、次の職場で何を大切にするかを説明できるよう整理しておくことが重要です。
「最低3年は続けるべき」という言葉は本当ですか?

3年間の経験が役立つ場面はありますが、心身を壊してまで続けなければならないというわけではありません…。
勤務期間だけでなく、現在の体調、教育環境、改善の可能性、得られている経験を含めて考えましょう。年数だけで安全や健康を後回しにしないでください。
辞めたい気持ちは、職場へ伝えたほうがよいですか?
最初から退職の意思として伝える必要はありません。
「最近眠れず、勤務中も集中しにくい」「特定の指導場面で強く萎縮する」など、事実と影響を相談できます。

直属の上司へ話しにくい場合は、教育担当者、相談窓口、産業医など別の相手も検討してください。
まとめ|「辞めたい」は、今の自分を守るための出発点です
新人看護師が辞めたいと感じる背景には、覚えることの多さ、失敗や叱責への不安、同期との比較、休んでも抜けない緊張、職場環境の問題などがあります。
まずは「今日の勤務から逃れたい」「今の職場を離れたい」「看護師そのものを辞めたい」を分けて考えてみてください。
そして、いつから続いているか、休日に回復するか、特定の条件で強くなるか、睡眠や食欲などに変化があるかを確認します。
一時的な落ち込みなら、その日の出来事だけで将来を決めなくて大丈夫です。
苦しさが繰り返しているなら、記録を取り、信頼できる人へ相談してください。
生活や出勤が難しいほど心身の変化がある場合は、退職の結論よりも休むことや専門家への相談を優先します。
辞めたいと感じたのは、看護師としての適性がないと決まったからではありません。
「仕事についていけない」という不安や、先輩の厳しさ、休んでも抜けない緊張が積み重なった結果かもしれません。
今の自分を守り、これからの働き方を考え直すための出発点にしてみましょう!

この記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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