新人看護師がインシデントレポートの書き方に迷う理由|事実を時系列で整理する方法

新人看護師がインシデントレポートの書き方に悩んでいるイラスト 仕事の悩み

はじめに

「インシデントレポートには、どこまで詳しく書けばいいの?」

「看護記録と同じ内容でいいの?」

インシデントのあと、先輩から「レポートを書いておいて」と言われても、何から書けばよいか迷う新人看護師もいるのではないでしょうか。

インシデントレポートは、自分を責めるための反省文ではありません。起きた事実を共有し、同じことが起こりにくい仕組みを考えるための資料です。

えりもん
えりもん

「反省していないと思われそう」と自分を責める言葉を増やすより、何が・いつ・どの順番で起きたかを正確に残すことが大切です。

この記事では、患者さんへの対応と報告を終えたあと、出来事を時系列で整理する方法を説明します。様式や提出手順は勤務先によって異なるため、院内マニュアルと上司・医療安全担当者の指示を優先してください。

インシデント後に患者の状態を確認して報告する新人看護師
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インシデントレポートは反省文ではなく再発防止のための資料です

厚生労働省の「医療安全管理者の業務指針」では、医療事故やヒヤリ・ハット事例の情報を収集し、事実を確認したうえで分析し、発生予防や再発防止へつなげることが示されています。

同じ指針では、集めた情報を個人の責任追及に使わないよう配慮することや、報告者を非難しない組織文化をつくることも挙げられています。

つまり、レポートで最初に必要なのは「私が悪かった」という自己評価ではなく、第三者が読んでも出来事をたどれる事実です。

レポートを書く前に、患者さんへの対応と報告を優先します

インシデントに気づいた直後は、レポートを開くことより先に行うことがあります。

  1. 患者さんの状態を確認し、必要な安全確保を行う
  2. リーダーや上司、必要な職種へ速やかに報告する
  3. 指示を受け、必要な観察・処置・連絡を行う
  4. 関連する物品、指示、機器の表示などを勝手に処分・変更しない
  5. 一連の対応を看護記録などへ正確に残す

厚生労働省の指針でも、事故発生時の初動として、関係者からの事実確認、関連する器材やデータの保全、所属長への連絡、診療録・看護記録への正確な記載などが示されています。

レポートの提出期限が気になっても、患者さんへの必要な対応を遅らせてはいけません。何をどの順番で行うか迷うときは、一人で判断せず、まずリーダーや上司へ現在の状況を伝えてください。

インシデントレポートを入力することは、緊急の報告や看護記録の代わりにはなりません。報告経路や記録方法は勤務先の規定に従ってください。

新人看護師がインシデントレポートの書き方に迷う4つの理由

1.「怒られるための書類」のように感じるから

患者さんへの心配に加え、「先輩にどう思われるだろう」という不安も生じます。必要以上の自己否定や弁明を足さず、確認できた出来事から並べます。

2.何をどこまで書けばよいか分からないから

勤務開始からの行動をすべて書く必要はありません。一方、「確認不足で間違えた」だけでも経過が分かりません。出来事につながった行動と前後の対応を、第三者が追える範囲で書きます。

3.事実と推測が頭の中で混ざるから

患者さんの発言は「患者は『トイレに行こうとした』と話した」、自分が見たことは「訪室時、患者はベッド横の床に座っていた」のように、情報源が分かる形にします。

4.原因まで自分一人で決めようとするから

出来事には、表示、物品配置、業務の重なり、確認手順など複数の条件が関係します。原因を一人で断定せず、自分が確認できた範囲を記載します。

事実を時系列で整理する4つの手順

手順1.最初に時刻だけを縦に並べる

いきなり文章にせず、メモへ分かる範囲の時刻を書き出します。

  • 実施前に確認した時刻
  • 行為を行った、または行いかけた時刻
  • インシデントに気づいた時刻
  • 患者さんの状態を確認した時刻
  • リーダーや医師などへ報告した時刻
  • 指示を受けて対応した時刻

時刻は電子カルテや指示履歴など、確認が認められている情報と照らします。不明な時刻を推測で埋めず、「○時頃」など施設の記載方法に従います。

手順2.それぞれの時刻に「見たこと・したこと」を置く

各時刻へ客観的な行動を足します。「不注意で間違えた」ではなく、「患者確認前に薬袋とトレーの患者識別情報が一致していないことに気づいた」のように書きます。

えりもん
えりもん

文章がまとまらないときは、「時刻→見たこと→行ったこと」の3点だけを箇条書きにすると、順番を取り戻しやすくなります。

手順3.患者さんへの影響と、その後の対応を加える

投与・実施の有無、患者さんの状態、観察内容、報告先、受けた指示と対応を加えます。「問題なし」だけで終わらせず、確認内容や客観的な数値を施設の様式に沿って記載します。

手順4.最後に推測・感情・曖昧な言葉を見直す

読み返すときは、次のような曖昧な言葉を具体的な状況へ置き換えます。

  • おそらく、たぶん、〜と思う
  • うっかり、つい、なんとなく
  • いつもどおり、きちんと、十分に
  • 忙しかったので仕方なく
  • 私がすべて悪かった

例:「忙しくて確認できなかった」ではなく、「同時刻に2件のナースコールがあり配薬を中断した。再開時、指差し呼称を行わず薬袋をトレーへ入れた」のように整理します。

レポートに入れたい6つの要素

確認する項目記載する内容
いつ発生・発見・報告・対応のおおよその時刻
どこで病室、処置室、廊下など発生した場所
予定していたこと指示内容、実施予定だったケアや処置
実際に起きたこと自分が見たこと・行ったこと・確認できた発言
発見後の対応状態確認、報告先、受けた指示、実施した対応
その後の状態症状、観察結果、経過など確認できた内容

勤務先の様式に専用欄がある場合は、その項目に沿って記載します。同じ内容を複数欄へ繰り返すより、それぞれの欄の目的に合わせて整理してください。

書き方を具体例で確認します

以下は、書き方を説明するための架空例です。実際の報告では、勤務先の様式とルールに従ってください。

曖昧になりやすい書き方

9時頃、忙しくて確認を忘れ、別の患者さんの薬を配りそうになった。自分の不注意が原因です。投薬前に気づいたので問題はなかった。今後は気をつけます。

この文章では、どの確認で気づいたのか、投与の有無、誰へ報告し、患者さんへ影響がなかったことを何で確認したのかが分かりません。

事実を時系列で整理した書き方

9時00分、A室の配薬準備を開始した。9時05分、患者本人へ氏名を確認する前に、薬袋と配薬トレーの患者識別情報が一致していないことに気づいた。薬剤は患者へ渡しておらず、内服には至っていない。薬剤を回収し、9時07分に日勤リーダーへ報告した。リーダーとともに指示内容および薬剤を確認し、勤務先の手順に沿って再準備した。

後者は、反省の強さを示す文章ではありません。しかし、発生から発見、報告、対応までを第三者が追いやすくなっています。

えりもん
えりもん

「どう思ったか」より先に、「どの確認で気づき、実施に至ったか、誰へ報告したか」を書くと、必要な情報が見えやすくなります。

事実と看護記録、原因分析を分けて考えます

インシデントレポートと看護記録は、役割が同じではありません。

看護記録には患者さんの状態や実施した看護、その後の経過を残します。レポートは出来事を共有し、原因分析や再発防止へつなげます。どちらか一方で代用せず、訂正が必要な場合も勤務先の規定に従ってください。

看護記録そのものの整理に悩んでいる方は、次の記事も参考にしてください。

書けない部分があるときは、空白を想像で埋めないでください

推測を事実のように書くと、その後の確認や分析が難しくなります。分からない部分は次の順番で確認します。

  1. 電子カルテや指示など、確認が認められている情報を見る
  2. 一緒に対応した職員へ、見聞きした事実を確認する
  3. 自分が直接確認した内容と、他者から聞いた内容を分ける
  4. それでも不明な点は、どのように記載するか上司へ相談する

他者の行動も断定せず、自分が見聞きした範囲を記載します。必要な聞き取りや原因分析は、医療安全担当者や組織が行います。

相談すること自体にためらいがある方は、次の記事も参考にしてください。

提出したあとに自分を責め続ける必要はありません

提出後も「仕事ができないと思われる」と不安になることがあります。起きたことを振り返る必要はありますが、報告したことと看護師としての価値は同じではありません。

厚生労働省の指針では、報告事例を分析して対策を現場へ生かすことが示されています。日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業も、事例を収集・分析し、医療安全に役立つ情報を共有しています。

えりもん
えりもん

報告できたことも、患者さんの安全を守る行動の一つです。必要な振り返りを終えたら、自分の人格まで責め続けなくて大丈夫です。

インシデント後の気持ちが何日も切り替わらないときは、次の記事で感情の整理方法を紹介しています。

よくある質問

Q1. 患者さんに影響がなかった場合もレポートは必要ですか?

報告対象は勤務先によって異なります。実施前に気づいた事例も見直しの材料になるため、「影響がないから不要」と自己判断せず、上司へ確認してください。

Q2. レポートに謝罪や反省を書いた方がよいですか?

まず必要なのは、出来事と対応を客観的にたどれる情報です。原因・改善策の欄がある場合も、「深く反省しています」だけで終わらせず、具体的な確認方法へつなげます。

Q3. 患者さんや職員の名前を書いてもよいですか?

氏名などの扱いは、勤務先の様式と個人情報保護の規定に従います。自己流で使い分けず、指定が分からない場合は上司か医療安全担当者へ確認してください。

Q4. いつまでに提出すればよいですか?

提出期限は施設ごとに異なります。患者さんへの対応と報告・記録を優先し、その後は事実を忘れないうちに院内規定に沿って作成してください。

まとめ|まず時刻を並べると、事実を書きやすくなります

インシデントレポートは、個人を責めるための反省文ではなく、起きたことを共有して再発防止へつなげる資料です。

書き始める前に患者さんの状態確認と必要な報告・対応を行い、その後に「発生・発見・報告・対応」の時刻を並べます。各時刻へ見たこと、行ったこと、患者さんの状態を置くと、文章にしやすくなります。

事実と推測を分け、分からない部分は想像で埋めずに相談してください。完璧な文章を書くことよりも、第三者が出来事をたどれる情報を正確に残すことが大切です。

インシデントの再発防止策を話し合う看護師たち

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